大阪鑑賞会の終了にて、プロジェクト完了!

レディ―フォーへのお問い合わせから始まったとするなら、本当に一年がかりでした「幻の屏風を復元!醍醐の花見を体感してほしい」クラウドファンディング・プロジェクトは、12月10日(日)、大阪の「谷六ヴィレッジ」にて鑑賞会を開催、無事盛況のうちに終わり、ついに完了することができました。
ご支援していただいた方、関心をもってご覧いただいた方、それに、他でも私の活動にご参加していただいた皆様に、改めて御礼を申し上げます。





会場になりました「谷六ヴィレッジ」は、その名の通り大阪地下鉄谷町線の「谷町六丁目」にあり、大阪ミナミにも近い場所ながら、落ち着いていて魅力的な街にあります。
ちょっと細い道が入り組んでいる奥にあるので、来た方々は「ホントにここかいな?」と思いながら、恐る恐る「こんにちは…」と声をかける、これがまたいい感じです。
もともとは昭和初めであろう、ぼろぼろだった住宅がリノベーションされ、非常に魅力的なスペースに変身しました。
http://www.taniroku-village.com/





東京の小石川大正住宅とは全く違い、ちょっと伝統的な日本家屋とは異なる趣ではありますが、レトロ感がありながら昭和の馴染みのあるリラックスした雰囲気もあるこのスペースが気に入り、大阪会場はここだ、と決めました。
実際の鑑賞風景。どうでしょう、この和気あいあい感。





オーナーの谷村さんが我がままを聞いて下さったのも、選んだ理由のひとつです。屏風を東京から輸送してそのまま数日留め置いていいと言って下さったそのお気持ちが嬉しい。
本当は手持ちで、開催直前に屏風を運び込むのが当初の計画でしたので。




手で大阪まであんな大きな屏風を運び入れる?




いえいえ、最初の計画では実際の屏風の「半分」の大きさだったのです。80㎝×40㎝×7㎝であれば、問題ありません。
でもいつの間にか原寸を復元すると思っている方が多いことが分かり、どうせ当初のイベント事業も自然消滅(詳しくは前回の報告をご覧ください)したことで、計画は全面見直し状態だったので、悔しさ半分「大変だけど、やったろうやないか!」と急きょ原寸に変更したのでした。




原寸にすると、制作費は倍、作業量は4倍になります。なので、9月末のプロジェクト完了が更に延びることになりました。
でも満足いく作品ができるのは、何物にも代えられません。胸を張って「どうだ!」と言える作品を作る機会というのは、意外と難しいのです。これを無理やりチャンスとして、突進することも時に必要なのは、この仕事をし続けてやっと分かってきました。





この苦労を超えてまた今回も感嘆の声を聞けました。ああ、すべてが報われます。
無表情で真っ白な人々の顔が、ロウソクの灯りに照らされて肌に血が通うように動き始めた時、皆さん本当の日本美術の姿にため息をもらします。





また、淀の打掛を羽織り、屏風の世界に没入する。
これはそうそう体験できるものではありません。
皆さん口々に




「本当に、醍醐の花見に参加したみたい」




とおっしゃっていました。「醍醐の花見を体感してほしい」という題目ですから、これ以上のミッション・コンプリートはありません。
男性の方も打掛を羽織って、没入していたので間違いありません(;^_^A





実は、この会場を選んだ理由が更にもう一つあります。
オーナーの谷村さんが、地元の芸術家や文化人やアーティストとコラボしたりイベントをプロデュースすることもされているので、今回大阪会場にいらした方々と素晴らしい化学反応があるかもしれない、と思ったのです。




その狙いも的中!
今回の鑑賞会からまた新しいプロジェクトが生まれ、また続いていくかもしれません。
余りにも大変すぎたプロジェクトではありましたが、でも、余りある成果が生まれ、今後も続いていくことも考えると、これ以上の成功はないのではないでしょうか。





繰り返しになりますが、皆様、本当にありがとうございました。
そして、しばらく骨休みしますが、左隻復元の声も高まっておりますので、またそれほど遠くない未来にまたお目にかかりましょう。

東京鑑賞会、大盛況でした。

色々なことが要因で、なかなか完了にならなかったクラウドファンディング、レディ―フォーで達成した「幻の屏風を復元!『醍醐の花見』を体感してほしい」プロジェクト、いよいよ最後の仕上げ鑑賞会まで漕ぎつけました。




なんと長い道のりだったことでしょう。
プロジェクトは3月31日に達成し、最初の計画では5月に完成、花見には間に合わないけども、貴婦人の打掛文様にある藤の季節には間に合うようなイメージでした。





ところが、もともと使用する予定だったイベントがなぜか自然消滅してしまい、制作費が足りなくってしまいました。
このプロジェクトは、もともとあったイベント事業から出る制作費の不足分を補てんするためのプロジェクトだったのです。




なので、まずはレディ―フォーに事情を申し上げて完了予定日を9月末に変更、制作費が足りないので、他の仕事を進めながらそのすき間で復元作業を続けてきたのでした。
では、9月末からさらになぜ延期になってしまったのか。それは、大阪鑑賞会のご報告のときに譲りましょう。





話は戻りまして、東京鑑賞会のご報告です。
会場は文京区小石川にあります「小石川大正住宅」です。関東大震災、東京大空襲、東日本大震災を乗り越えた奇跡の館で、その名の通り大正時代に建てられ、一昨年にリノベーションを経て、レンタルスペースとして再出発しました。
下見に伺ったときに「屏風を飾るならここだ!」と思って、即決でした。





唯一の弱点は、柱が細いため家に上がれるのが10名ほどだけということでした。
東京鑑賞会にご参加いただく方(プロジェクトで「鑑賞会チケット」を買っていただいて、関東にお住まいの方)が20名ほどいらしゃったので、12月2日(土)と3日(日)の2日に亘って開催いたしました。




プロジェクト概要でご説明しておりますが、この花下遊楽図屏風とのお付き合いはおよそ25年にもなります。
まずは、関東大震災のときに失われてしまった右隻の中央二扇を復元することから始まりました。大正時代ですから白黒写真はありました。それをカラーにしていくわけです。





出来上がった画像は、当時、非常に評判になりました。そして私はデジタル復元師として歩き始めるわけです。
現在に至るまでに、主人公である貴婦人の打掛を実際に復元してみたりして、この屏風との関わりはずっと続いてきました。(今回は、その打掛も含めて鑑賞します)
そんな間に、私は「賞道」という、制作された当時の色に再現した美術品を、当時と同じ環境で鑑賞する手法を確立して自分の道を定めたわけですが、そのとき、はた、と気づいたのです。





「あれ、花下遊楽図の制作された当時の色を復元していない!」




長くかかわってきた原点の作品でありながら、実は「賞道的に」鑑賞することなくここまで来てしまいました。
なので、今回の鑑賞は、いわば私の夢だったのです。




などともったいぶりながら解説をしてから、いよいよお披露目です。
一度皆様には移動していただいて、表が見えないように屏風をそろりそろりと開いていきます……。
そこへ、まだ絵を見ないように背中を向けたままもとの位置に戻って、心の準備をしていただきます。





「はい、どうぞ!」




「うわ~!」
「おお~!」




いつもよりも大きな歓声ともどよめきともつかない声が部屋を満たします。
今回は原寸大ですし、解像度もばっちりです。なので、全体でも迫力ありますし、近づいても一筆一筆の筆致が分かります。改めて自分でみても、これはなかなかの出来です。
そして、座って鑑賞。描かれた人々と視線がちょうどよくなるので、やはり座って鑑賞するように描かれているのが分かります。





恒例の和ろうそくでの鑑賞へと移ります。今回、賞道の趣旨に賛同いただいて、特別にご許可いただきました。
揺らめく温かい灯りの中で、人々が次第に浮かび上がってまいります。
今回気づいたのは、下からの柔らかい灯りによって、貴婦人の顔が妖艶に見えたことです。上からの光で真っ白な無表情だったとき隠されていた秘めたる感情が、ついに表出したかのようです。





最後、ご用意した着物、主人公の貴婦人が着ている着物を復元したものを羽織っていただき、貴婦人とのツーショット。
まるで、絵から飛び出したようで、夢か現か、お酒も飲んでいないのに、ふわふわと不思議な感覚に酔いしれてしまいました。やはり、光と色のマジックは、やってみないと分かりません。
この道は本当に奥が深いです。




いよいよ12月10日は大阪鑑賞会。
これで本当の本当、長い長いプロジェクトが終了になります。
最後まで、気を引き締めて頑張ります。

「にっぽん!歴史鑑定」撮影終了!

BSのTBSで毎週月曜日夜10時から放送されている「にっぽん!歴史鑑定」ですが「国宝ブーム」の波にのって私を取り上げてくれ、3回に分けてロケを敢行、先日、やっと撮影が完了しました。
最終日の朝は、冷たい雨が降っていました。





今回は、なんか長く感じられました。なんでだろう。
きっと、他の仕事や打ち合わせの合間をぬって関西に戻って撮影したこともあったりして、もうてんてこ舞いだったからかでしょうか。
花下遊楽図屏風の制作も進めてでしたから、今うしろを振り返ってみると、たくさんの絶壁や崖があったのを見てぞっとしているという感じです。(実は、まだその道は続いておりますが……(;^_^A)





はじめは六本木のスタジオで、番組のパーソナリティーである俳優の田辺誠一さんの収録現場へ。
途中ごいっしょして絵巻物の鑑賞法をご紹介しました。
淡々として真面目に仕事をこなす田辺さんでしたが、「ガラス越しに見ている広げられた絵巻物では、面白くない」というところに強く反応して下さいました。そこは使ってほしいなぁ。
何かちょっとでも田辺さんの心に響くものがあったら嬉しいです。





二回目のロケが、日本家屋での風神雷神図屏風の鑑賞でした。
なんと「のせでんアートライン」で使用させていただいた「嶋田商店」の邸宅をまたお借りすることができました。
ホント、イベントのまとめ役の一人・友井さんには本当にお世話になりました。
忙しい方なのに、何から何までして下さるので恐縮しておりましたが、「実は、のせでんアートラインだけでアーティストと地元の方々の交流が終わってしまうは良くなくて、今回みたいにそれ以降も交流が続いたり広がったりすることが大切」とおしゃっていただけたので、何か安心いたしました。
ホント、心のおっきい人です。





そして、先日は、私の復元作業現場の撮影です。
過去の自分の作成してきたデータを呼び出してきて、何か懐かしく思ったり、まだ粗が見えたりするところもあったりして……。
でもカメラマンの方が、出てきたデータを見て「お~」って感嘆の声を漏らしていたので、ちょっと嬉しかった。最初のインパクトって大切ですよね。私は見慣れすぎているので、その反応は勉強になります。





上の写真をみてびっくり。
口元が、死んだ親父そっくり。それなりに歳重ねています。
早く、ことを為さないと、歳に追いつかれてしまいますね。


今は編集が大変なことになっているでしょうね。
制作会社のnexusネクサスは、「美の巨人」「開運!なんでも鑑定団」の会社。今後、何かつながる希望も抱きつつ……。
放送は12月18日(月)夜の10時です。
どうぞご覧ください。

桜友会の月例会でお話しました。

桜友会の月例会にて講演をして参りました。
…と言ってもピンと来る方は少ないかもしれませんね。桜友会は、学習院大学のOBOG会です。




出身校からご指名をいただいてお話をさせていただくことは本当に名誉なことです。お世話になったご恩を、こういう形で少しでもお返しすることができるなんて、そんな機会に恵まれることはめったにありません。
あ、でも、出身の小学校で講演をさせていただいたこともありました。あのときも感慨ひとしおでした。




やっぱり学習院って特殊です。私は大学だけですので本当に一般人なのですが、在学当時から、何かスペシャルな方々がはやりいらっしゃって、なんとも言えないオーラがありました。(そういう方の多くは幼稚園か初等科から上がられています)それは、他の大学にはない雰囲気だと思います。
「ごきげんよう」を「What’s up?」的に使っても違和感のないキャンパスは目白にしかありません。





講演させていただいた「霞会館」は霞が関ビルの34階にあります。
運営している団体は、もともとは華族だったということで、それを知るだけでも身体が固くなります。いらしている方々は、もう身なりからして違います。特にご婦人方。

「ごきげんよう」

おお、懐かしいフレーズ。
私と私の親の世代とちょうど中間の方々、というイメージでしょうか、上品さをそのままに、でもエネルギッシュに歳を重ねられて皆様魅力的です。「身分」ということをまったく物差しにしない私ですが、その「分」という重いものを背負いながら、毅然と歩む人には敬意を感じます。
私の同窓生を誘ってもいいという話でしたが、中学、高校の友人とは多くやりとりしているのに、大学時代の友人とはやりとりがない。それも不思議です。
きっと、私には「分」というものが曖昧過ぎて、周りの人たちもとっつきにくかったのかもしれません。




この会では、講演の前にお食事を頂きます。それがよかった。
何となく緊張のとれない私は、ちょっとお腹を満たして、お酒をいただいたお陰で、普段の私に戻れました。





始めればいつものペースです。
皇子のお墓とされる「高松塚古墳」のお話を、「歴史秘話ヒストリア」での発見などを交えてお話を始めました。





その次は「年中行事絵巻 祇園御霊会」で絵巻物のご紹介。
実際に絵巻物を所有してそうな方々を前に、まあ絵巻物の鑑賞法をよく説明したものです。でも、デジタル復元はどんな方でも経験ないですから、原色で鑑賞する重要性を説きながら気合で押し切りました。
そして陰影礼賛のすばらしさが「賞道」の重要な点ですから、それを蝋燭の灯りに照らして鑑賞する「風神雷神図」でご紹介。





ミニチュアをお持ちして、それぞれを体感していただきました。
「ここから見る風神の顔は、普段見せない表情ですよ」
と言って、覗いでもらうと

「あ~」
「おお~」

とどよめきです。
やはり理屈ではありませんね。





「ほら、左の貴婦人と視線が合いますでしょ?」
「へえ~」

これです。
どよめきや驚きの声は、どんな方も同じですね。

「普段は眠くなることがあるお話もありますが、今回は面白くそのまま最後まで楽しめました」
というお言葉は本当にうれしい。お腹が満たされ、お酒も入った中で最後まで楽しませることができたなら、それはディナーショー並みではないですか。
…なんて。

すでに「賞道に行きます」という方も数名いらっしゃり、メッセージは確実に届けられたようです。
本当に光栄です。
でもこのメッセージは私ではなく、私の体を借りてしゃべる古の絵師たちなんですよね。彼らにつきあうのはホント大変です。

カラー化の意外で大きな効能

カラーにするということは、ただ色をつけるということではないようで、毎回、色々と学ぶことが少なくありません。




一年半前、新木場の瀧口木材さんから、色あせた航空写真を復元できるか、と相談を受けました。復元の経緯はすでに記事にしているので(「昭和50年、新木場空撮写真を復元」)そちらをご覧いただきたいのですが、この仕事によって予想もしなかった「カラーライズの真価」を知るきっかけになったのです。





その名の通り木場としての機能、そして文化が劇的に変化しつつある新木場。瀧口さんは昔の木場の活気を復活させようという熱意をお持ちです。
そんな瀧口さんなので、もとの姿を取り戻した復元の成果を大変喜んで下さいました。確か80枚も焼き増しを発注され、それを地元の企業の方々に配ったほどです。
それだけではなく、額装したものを地元の銀行に貸し出して、そこにいらっしゃるお客様にも懐かしい新木場の姿を紹介しました。





感激した私は、そこでもう一歩前へ進めるために、瀧口さんなMさんを紹介しました。
Mさんは、東京で賞道を初めて開催するときに全面協力して下さり、本業の建築やインテリアのデザインと製作と実行力で、伝統産業や地方文化の再興にも積極的に心血を注いでいるスゴい人です。




私は自分の賞道を立ち上げたばかりで手一杯でしたので、その紹介だけで終わってしまいましたが、瀧口さんとMさんの活動は続き、また地元の別の木材関係企業を巻き込みながらだんだんと活動を具体的に、また拡大させております。
それが「海床(うみどこ)」プロジェクトです。





京都の川床は有名ですが、それの言わば海版でしょうか。かつて保管などのために木材を浮かべていたところに、床を浮かべてレジャーを楽しむので、川床のよりも直接水と接するワケですが、ゆらゆら揺れたりして却ってそれが面白そうです。
具体的には10月8~15日に実施され、アーティストの木にまつわる作品展示やミニコンサートもあるようです。スゴい!




そこに人が集い、また繋がりが生まれ、さらに展開を遂げる。そのキッカケが一枚のカラーライズした写真と言うのが嬉しいです。
ホントにカラーはスゴい力を秘めているんですね。




最近、ある企業から白黒の工場の航空写真をカラーにしてほしいとの依頼がありました。
恐らく昭和30年代初めの様子。化学工業の工場で、カラーに仕上げた画像は、パネルにして一階ロビーに飾るのだとか。
そこにもただカラーにする以上の、関係者たちの想いが伝わってきます。





カラー化する際に、その工場の様子を知っている方に取材を致しました。その時には、ある程度彩色したものを持っていきます。その方が、色々と思い出しやすいからです。
「薬品を入れてた瓶は、竹カゴに入れてたんだよ」
「川のそばに工場があったので、そのまますぐ運搬できた」
「この頃から、建物などの色のルールは変わってない」
などなど、面白いお話ばかり。思い出すその方も、懐かしそうでした。





「写真だけでなく、記憶もカラーにしている」
最近私がよく言うセリフなのですが、改めてその効果が実感できる体験でした。
これからも依頼してくださる方々の気持ちを大切に、カラーライズの作業にあたりたいと思っております。

「のせでんアートライン2017」完全燃焼!

「のせでんアートライン2017」は、私がアーティストとして参加した、初めてのイベントとなりました。
「のせでん」は、兵庫県の川西能勢口駅から、古くから妙見信仰で多くの参拝者で賑わう妙見山の妙見口を結ぶ能勢電鉄。
夏休みの期間を中心に毎週週末、会場を移しながら代わる代わるアーティストたちのワークショップが展開していきます。





これまで展示中心だったこのイベントを、造形作家・友井さんと山脇さんが中心となって取りまとめ、来場者との交流するワークショップを中心とした方向に展開、なので私が参加する意味が増したのです。




というのも、私の作品と言えるものは、デジタル復元アート。制作するには独自のノウハウと創造性はありますが、独創性という意味ではなかなか伝わらないのが実情です。
そこを「制作された当時の色」を「制作された時と同じ環境」で「制作された時と同じ方法」によって鑑賞し、そのワークショップを通して日本人は本当はどんな感じで美術を楽しんでいたかを体感しています。
つまりは、体験しないと成立しないアートなのです。




特に今回は、長年夢みてた日本家屋での開催です。東京の賞道ではなるべく畳敷きの部屋で、襖を閉められる環境を選んで開催してきましたが、どうしても現代的な建築物の中に設置された和室を使用せざるを得なく、「制作された時と同じ環境」という点では不十分でした。





今回は嶋田酒店という古くからの酒屋の広いお屋敷をお借りして、開催することができました。縁側があり、上からの電灯は取り外すので、正しく外光だけの横から光だけ。なので、実は、私の方がワクワクだったのです。





まずは、床の間のある居間で「年中行事絵巻」を鑑賞します。デジタル復元アートを5本用意しましたので、だいたい各一人ずつ手で触って鑑賞していただきました。
両手で画面をスクロールすことで画面が展開する絵巻物。ここで、こちらから働きかけないと、日本美術は話してくれないことを解説します。





次は横にある狭い部屋に移動すると、「風神雷神図屏風」が待っています。
床の間に接する縁側とは反対側にある部屋、つまりは外光から遠い部屋なので、襖を閉めると真昼なのに真っ暗になります。それを利用して、ロウソクの火だけで鑑賞。
「ほら、まるで骸骨のように怖い表情になるでしょう?」とロウソクを動かし揺らめかせながら、美術館での展示では決して見せない、作品の本性を暴いてみせます。すると見る人はもう日本美術の虜です。





さらに縁側を通り、奥の座敷へ。(日本家屋の、この、どんどん奥にお客様を招き入れる動線もいいんです)
そこには、嶋田酒店が所蔵する「洛中洛外図屏風」がドトーン!と設置されております。
下見の時に拝見して、本物の屏風があればさらに楽しいので、「使いたい!」と無理をお願いして用意していただいたのです。
二隻の屏風をハの字に配置して、その間に座すと、座る位置はちょうど「御所」になります。つまりは天下人の位置になります。座ればあなたも天下人。このような体験は、早々できるものではありません。
また、手前で見る側は、京を背にする天下人を拝する形になるので、自ずと「はは~」となるわけです。その金屏風の輝き方も、やはり横からの外光を受けて柔らかく光り、中に座す人の威光をたたえる仕掛けになっています。





そして最後、隣へ続く襖をバーン!と開くと、白い大きな箱が登場します。そう、高松塚古墳壁画のレプリカです。
お子様も参加するイベントなので、急きょ展示することにしました。中に横たわるだけで、飛鳥時代へタイムトリップできるからです。夏休みの絵日記に、最高の題材ではないでしょうか。
「歴史秘話ヒストリア」でもご紹介したあの高貴な飛鳥美人と視線が会うたび、中から感嘆ともどよめきともつかない声が聞こえてきます。
口々に「思ったよりスッキリしている」「このまま寝れそう」という感想をもらしていたので、仏教が普及する前の人々の死者に対する心情にも想いを馳せながら時代背景を説明いたしました。




という感じでやって参りました私のワークショップ、作品を使ったパフォーマンスという意味では、他のアーティストに比べちょっと傾向が違っていましたが、これほど与えられた会場を使い倒したワークショップはなかったと思います。
私としても日本家屋で十分楽しめたこの経験を生かして、これからの賞道をもっとダイナミックに展開してきたいと思います。




搬入から撤収まで色々な方々にお世話になりました。
特に友井さん、山脇さん、藤沢さん、瀧野さん、安田さん、茨木さん、荒井さん、そして嶋田さん、本当にありがとうございました。
ちなみに、今週末は「のせでんアートライン2017」最終週「妙見山編」です。皆さま、ご都合があいましたら是非ご参加ください。先日のUFOを呼ぶイベントでは、本当にUFOが来るほどのパワフルな芸術祭です。

「のせでんアートライン2017」に参加します!

今年の夏は、「賞道のすすめ」とは違った、さらに熱い活動を展開します!
その一つは「のせでんアートライン2017 ~里山の学校芸術祭~」の参加です。まさか私がアーティストとして参加するとは!

8月5日(土)と6日(日)のそれぞれ13時40分~と16時40分~の計4回、国宝のレプリカをべたべた触って楽しんじゃおう! のいつもながらの楽しいワークショップを行います。

いよいよ関西で本格展開をする「賞道のすすめ」のスタートアップ企画です。
タイトルにもあります「のせでん」とは、兵庫県の川西市の川西能勢口駅から、妙見山で有名な妙見口駅までをつなぐローカル線。
その沿線の色々な地域で、パフォーマンスやワークショップを中心とした「わくわくアート」が展開されるのです。
すでに7月22日より芸術祭は川西能勢口エリアからスタート。大いに盛り上がったとの話を伺っております。

私の担当するエリアは「地黄+野間エリア」。町のシンボル・非常にカッコいい公民館でのワークショップなど、なんと9か所で、さまざまなアートが花開く二日間となります。(私のは赤の3)

私は、公民館の隣にある古くからの老舗酒屋の古い日本家屋で、国宝レプリカを鑑賞するわいわいワークショップを行うわけです。

これは、私が夢に描いていた理想的な環境です。
ずっと話していた「上からの電灯の灯りではない、横からの自然の外光で鑑賞」がついに実現するのです。
なので、張りきって「風神雷神図屏風」を持ち込んじゃいます!
さて、風神雷神がどんな表情を見せるか、どうぞご期待ください。というか、私からして期待しております。

そして、施設ではないので、和ろうそくでの鑑賞ももちろん実現できます。
揺らめく灯りの中で、絵巻物がどんな物語を紡いでくれるのかも楽しみです。
そして… レプリカでない本物も用意いたします。というか、その伝統の酒屋にたどり着いたお宝がおかれた奥座敷にも、ご案内!

日本人がどんな環境で、何を見ていたのか…
これはもう体験するしかありません。田舎の夏を満喫するだけでも価値がある、素晴らしい体験の連続「のせでんアートライン」まで、どうぞお越しくださいませ。
詳しくは、「のせでんアートライン2017」を検索して、サイトをご確認ください。
皆様の、お越しをお待ちしております(^^)

北九州、博多での飛躍

今回の北九州、博多での講演は、挑戦の意味が大きく、気合を入れてやって参りました。
と申しますのも、「賞道のすすめ」や「伝賞プロジェクト」で蓄積してきた、興味をもっていただく話し方、楽しく鑑賞へのご案内する構成などが、全く賞道などの予備知識のない方々に通用するかどうか、挑戦する場になるだろうと思ったからです。



ちょっと前までは、ふとした時に「あれ、俺なんでここに立ってんだろ」と、急に人前で話すことに違和感と緊張感に襲われていた私です。多少前回よりもスキルアップしているとは思っていましたが、そのおごりも危険という経験もしてきました。

つまりは不安だらけだったのです。

途中までなかなか人が集まらなかったこのイベント、「日本美術って、一般にはそんなもんなんですよ」と言って余裕を見せておりましたが、集まらいとガッカリするだろうし、一方で集まり過ぎても怖いなぁという面もなくはなく…
でも、いつも応援して下さる高坂さんのご尽力が実を結び、1日目、八幡の永明寺(えいみょうじ)での会は広いお寺のお堂が埋まるくらいのお客様!



しかも当日は土砂降りのひどい天候にもかかわらず、なんとキャンセルなく皆様お越し下さいました。これにはどんなに相当励まされたことか!気合いがさらに入りました。
もうびびってはいられません。全力投球で挑みます。



内容は「地獄草紙と極楽世界」。もっともお話をしてきた、私にとってはテッパンコンテンツです。
まずは極楽浄土の世界から。
前までは、極楽世界を説明するのに屏風を用意するか、あるいは画像でお話しするしかなかったのですが、最近は山越阿弥陀図屏風の中央部分を掛け軸仕立てにして、持ち込めるようになっています。これは便利(^^)
本当は、西側に屏風を自立させ、西方から迎えに来る阿弥陀様の臨場感を楽しむのですが、掛け軸のかけ方を説明しながらその鑑賞法を解説することで、足りない情報は他の情報で補いながら、十分楽しんでいただける内容に工夫しました。



そして地獄草紙。
私がお寺にこだわったのは、和蝋燭での鑑賞が実現できるからです。これは東京でも滅多にできない贅沢な趣向です。



揺らめく灯りに照らされて、新生「地獄草紙」(新場面をプラスし順序を入れ替えた)を堪能していただきました。
これには皆様も魅了されたようで、一気に会場の一体感が生まれました。
地獄のお話をしながらも、大いに笑いもあり、和気あいあいの大盛況の一夜。
やっぱり北九州の方は、明るくて優しくて好きだな〜。

翌日は、お天気も回復し、博多な桜坂観山荘にて、第一回「観山アートサロン」が開催されました。
こちらの内容は、昔のド派手な仏たち。
サロンという、いい意味でちょっと気取った雰囲気と、高級和食がいただける会なので、前日とはガラリと変わります。



皆様、食い入るように話を聞いて下さいました。ちょっと静かなので、そこは気になりましたが、とにかく一所懸命お話ししました。
持参した金ピカ弥勒菩薩には、吸い寄せられるように見入っている方が多く、ただド派手だったわけでなく、暗い中で光る金の美しさを実感していただいけているだなと、だんだん分かってきました。

(こちらの会の写真が入手できなかったのが残念)



お話の後、お食事も進みお酒が入ると場も和んできます。やっと口を開いて感想をお話ししていただき、皆様が楽しんで下さっている分かってきました。ほっ。

こうしてやって参りました二回の講演。
エンタメの演出やプロデュースのプロである高坂さんに、「相当腕上げだね〜。大したもんだ」とお褒めいただいたのが何よりも嬉しく、また大きな自信となりました。
私は、先生になりたいわけではなく、エンタメ要素もありの伝導師で行きたいので、方向性が間違っていないことが確かめられて、本当に充実していました。

北九州と博多の皆様、ありがとうございました。
また、参りますね〜(^^)

《賞道》人を想う、気持ちを送る

第5回、春季「賞道のすすめ」の最終回は、初めての試み「古墳壁画」でした。
この日は、ひどい雨模様で準備が本当に大変でしたが、お越しいただく時間には多少は小降りになり、名古屋から参加予定の方も何とか運転再開の新幹線に乗ることができて無事参加して下さいました。
ホント、どうしても体感してみたい!という方々の熱意に、感謝の気持ちでいっぱいです。





今回の目玉はなんと言っても、原寸大の「高松塚古墳」の石室に身を横たえてみること。
「歴史秘話ヒストリア」で井上あさひさんが体感したあの世界を、本当に味わってみます。





高松塚古墳に横たえると、描かれている人々や青龍、白虎がすべてが足元へ進むように向いているのがわかります。それは魂が足が向いている南の方へ運ばれるイメージという説があります。
といっても、目に見えるのは頭近くにいる女性像「飛鳥美人」と天井の星宿図だけ。星は金箔なので、キラキラ光ってリラックスできます。
なるほど、送り出す人々の気持ちがあたたかく感じられる空間になっていて、死のイメージがほとんどありません。





16人の中で熱い視線を送るのが、番組でもご紹介した赤い服を着た正面向きの女性です。赤い服は、女性の中ではかなり身分の高い方が身に着けるということが番組で分かりました。
そんな彼女は「カメラ目線」というよりかは、実は「伏し目」。
でも、それが却っていいんです。寝そべって見上げると視線が合う感じがするのは、この「伏し目」の効果であることが確認できました。




飛鳥の人々の細やかな人を想う心。
賞道もそれに負けないように、「おもてなし」で心を形で表現いたします。
今回は、前回やって大好評だった「象鼻杯(ぞうびはい)」が再登場です。蓮の葉の真ん中に小さい穴をあけ、上からお酒を注ぎ、茎に口をつけてストローのように吸っていただきます。
ほのかに蓮の香りもついて、初夏の爽やかな味わいが堪能できる仕掛けです。





そんな昔に学びながら、1年半に亘って続けて参りました「賞道のすすめ」は、半年間、お休みをいただきます。
「人を想う心」を大切にして続けて参りましたが、色々と反省点もたくさん出てきて一度整理してみたい、という気持ちと、いよいよ大阪に「賞道のすすめ」を展開する計画を具体的にするために、お時間を頂戴します。




もちろん、こちらのレポートやブログはアップしてまいりますので、引き続きお付き合いください。
またパワーアップして戻ります「賞道のすすめ」にどうぞ、ご期待ください!

《賞道》平安びとの視線

 「地獄草紙」ははじめからラインナップに入っている、「賞道」定番の作品です。
私もこの作品を解説するのは、回数から言うと一番多いのではないでしょうか。それほど、テッパンのコンテンツです。




 なのに、いわば「賞道」を深く理解している方々を前に、なぜ鑑賞したかもしれない作品を改めて紹介したかというと、新しい場面が追加され、そのお陰で絵巻物の性格がガラリと変わったからです。





 追加されたのは「銅釜処(どうふしょ)」。この部分だけボストン美術館に所蔵されています。
 罪人たちが大きな釜に入れられて、獄卒という地獄の住人にいたぶられています。大きな箸で、かき回されているという場面です。
 なんと言ってもこの場面の主役・獄卒の色をどうするか、が一番の問題でした。ほとんど、直接色は判断できません。でも、鼻の脇に緑らしき顔料のあとが見つかりました。さて、はたしてこの程度で、緑と判断していいか……。





といいながら、緑でぬることはあまり躊躇しませんでした。すでに「鉄鎧処(てつがいしょ)」経験ずみだったからです。立っている獄卒ももともとはほとんど顔料が剥落し、白い状態だったのですがある専門家が、全体のバランスから言うと五行の色世界のうち緑が足りない、と指摘され、後年実際に本物を見てみると鼻の脇とあご下に緑の顔料が残っていたのです。
 つまりは、鉄鎧処の獄卒と似たような状態で現代に伝わっているのです。そういう意味でも、この銅釜処はもともとこの地獄草紙に入っていたことは間違いありません。





 どうでしょう、よみがえった銅釜処。緑の獄卒が、実にユーモラスです。
 さて、この地獄を絵巻に戻すわけですが、順番はどうしましょう。もとになったとされる経典にのっとって、今回各地獄をばらばらにし、その経典に登場する順序にしたがって並べ替えてみました。
 すると、面白いことに気づいたのです。
 はじめもともとは後ろの方にあった「黒雲沙(こくうんさ)」という地獄が頭にきます。そしてその次に、現状トップにある「屎糞処(しふんしょ)」に、これも後ろの方にあった「膿血処(のうけつしょ)」と続きます。実はこの三点、みな遠景の風景、割と遠くから引いて見ている描写です。

 次に出るのが「銅釜処」。ここで、どーんと獄卒が登場です。そういう意味で緑は非常にインパクトがあります。
 そして、「鉄鎧処」「函量処(かんりょうしょ)」「鶏地獄(とりじごく)」とキャラの立ったド派手な地獄が続くのです。

 つまりは、カメラがどんどんズームインして、見る人を地獄に引きずり下ろすような構成になっていたわけです。
 実に考えられているな~ と改めて感心させられました。やっぱりやればやるほど、真実は立ち現れてくる。これぞ「賞道」の醍醐味です。





 そんな平安ひとの視線に気づかされた今回、平成びとの視線も負けていません。
 なんと、地獄草紙を立てて、後ろからロウソクライトを照らしていました。デジタルのレプリカなのでその程度の扱いはOKですし、LEDライトなので燃えないので安心。そうすると、尚さら獄卒たちが生き生きとみえるのです。目などは本当に光っているわけですから、本当にリアルです。




 現代ならではの、しかし「攻めて鑑賞する」という意味では、伝統的な鑑賞といえるでしょう。あれ、もしかして平安びとも危険を冒してここまでやっていた? だんだんと、やっていたような気もしてまいりました。
 「賞道」のこころは、確実に広まっているようで、本当に嬉しく思いました。私も勉強させていただいております。