子どもにも相性のいい日本美術

子どもにも相性のいい日本美術

10月4日(木)、中央区立月島第二小学校の6年生を対象に、「本当の日本美術の面白さを学ぼう」というタイトルで授業を行ってきました。
今回、夏休みの子供たちと行った「ミュージアムをつくろう!」プロジェクトを企画して下さった、キッズMさんとの共同プロジェクトです。




控え室を示す張り紙に、私の名前とともに絵巻物が!
ウェルカムな雰囲気が、本当に心に沁みてきます。





今回は、2時限目から4時限目まで各クラスごとの授業、給食をはさんで、5時限目に6年生全体の授業を体育館で行うという、なかなかハードなスケジュール。
元気いっぱいの子供たちですから、これは相当です。気合が入ります。





初めは絵巻物。
「年中行事絵巻」の「祇園御霊会」を鑑賞してもらいます。
自分の手で触って、くるくると動かすことによって、祭りの行列が動き始めます。





たくさんいる人々の中から、ウォーリーを探せ、みたいに
「この人を探してください!」
と言うと、熱中して探し始める子供たち。
自然と、絵巻物をくるくるし始め、

「あった!」

と、うれしそうな声が上がります。




前日に思いついた、この「ウォーリーを探せ作戦」は、ありだな~

次に、風神雷神図屏風を灯りを付けたときと、消したときの両方を鑑賞します。





見る子たちの反応もさまざま。
眼と歯だけが光る、骸骨のような表情を見つけて嬉しそうな子、本当に怖がる子...
大人になって、鬼の絵を見て怖いなんて思うことはなくなりましたが、そういえば子供のころは本当に怖かったものでした。
しかも、こんな暗闇でロウソク一本ですからね。

でも、この暗い中での鑑賞を、昔の人の気持ちとつながることができた、と言ってくれる生徒さんもいました。
本当に嬉しい反応です。

そんなこんなを3回繰り返して、いよいよ給食です!(^^)
給食なんて、機会がないといただけませんから、ここはぜひ、ということでお願いしておりました。





え、こんなにヘルシーでいいんでしょうか。
まるで、私のために作っていただいたような、バカ渋なメニューです。
ただ、和食といっしょにのむ牛乳だけは、昔とそのまま。
このミスマッチが、却って懐かしい味でした。


さて、後半戦です。
(前半戦が3回あるので、本当はそういう感じではありませんが)

クラスの女の子一人に、淀の着物を着ていただきます。
もう一人男の子には家来役をしてもらいます。





高級な着物です、ただでは着させません。

女の子「誰かおるか?」
男の子「姫、ここにおりまする!」

という寸劇をしてもらいます。
女の子は、はじめ後ろを向いて、打掛を翻しながら正面を向き、セリフを言います。
ぶっつけ本番。

「誰かおるか?」
バサッ!





どうです?
これは寸劇史上、最高の「ひるかえり」です。

普段は恥ずかしがって、こんなに盛り上げることはない、と先生がおっしゃっていたので、これも大成功のようです。
こんな遊びを通して、昔の人の暮らしぶりが実感してもらえるといいですね。





もう一つは、ド派手な色の仏像を解説しました。
「堂内のうす暗い中では、このド派手な色もマイルドになって、きれいに見えたんですよ」
この小学校の修学旅行は富士山だったそうです。
なので、中学校になって京都・奈良をめぐるときに参考になればと思ってお話しました。




中学校へすすむ子供たちへ、
「今の好きを大切にしてください」
という言葉を贈りました。

そもそも私がデジタル復元師になったのも、子どものころから「絵が好きだった」ということから来ているのです。




贈った言葉が通じたのか、あるいは本当に美術品を楽しんでもらえたのか、
講演が終わっても
「触らせてください」
「質問いいですか」
と最後までエネルギッシュな皆さんでした。

お陰様で、無事終了。
またまた燃え尽きました。