カラー化の意外で大きな効能

カラー化の意外で大きな効能

カラーにするということは、ただ色をつけるということではないようで、毎回、色々と学ぶことが少なくありません。




一年半前、新木場の瀧口木材さんから、色あせた航空写真を復元できるか、と相談を受けました。復元の経緯はすでに記事にしているので(「昭和50年、新木場空撮写真を復元」)そちらをご覧いただきたいのですが、この仕事によって予想もしなかった「カラーライズの真価」を知るきっかけになったのです。





その名の通り木場としての機能、そして文化が劇的に変化しつつある新木場。瀧口さんは昔の木場の活気を復活させようという熱意をお持ちです。
そんな瀧口さんなので、もとの姿を取り戻した復元の成果を大変喜んで下さいました。確か80枚も焼き増しを発注され、それを地元の企業の方々に配ったほどです。
それだけではなく、額装したものを地元の銀行に貸し出して、そこにいらっしゃるお客様にも懐かしい新木場の姿を紹介しました。





感激した私は、そこでもう一歩前へ進めるために、瀧口さんなMさんを紹介しました。
Mさんは、東京で賞道を初めて開催するときに全面協力して下さり、本業の建築やインテリアのデザインと製作と実行力で、伝統産業や地方文化の再興にも積極的に心血を注いでいるスゴい人です。




私は自分の賞道を立ち上げたばかりで手一杯でしたので、その紹介だけで終わってしまいましたが、瀧口さんとMさんの活動は続き、また地元の別の木材関係企業を巻き込みながらだんだんと活動を具体的に、また拡大させております。
それが「海床(うみどこ)」プロジェクトです。





京都の川床は有名ですが、それの言わば海版でしょうか。かつて保管などのために木材を浮かべていたところに、床を浮かべてレジャーを楽しむので、川床のよりも直接水と接するワケですが、ゆらゆら揺れたりして却ってそれが面白そうです。
具体的には10月8~15日に実施され、アーティストの木にまつわる作品展示やミニコンサートもあるようです。スゴい!




そこに人が集い、また繋がりが生まれ、さらに展開を遂げる。そのキッカケが一枚のカラーライズした写真と言うのが嬉しいです。
ホントにカラーはスゴい力を秘めているんですね。




最近、ある企業から白黒の工場の航空写真をカラーにしてほしいとの依頼がありました。
恐らく昭和30年代初めの様子。化学工業の工場で、カラーに仕上げた画像は、パネルにして一階ロビーに飾るのだとか。
そこにもただカラーにする以上の、関係者たちの想いが伝わってきます。





カラー化する際に、その工場の様子を知っている方に取材を致しました。その時には、ある程度彩色したものを持っていきます。その方が、色々と思い出しやすいからです。
「薬品を入れてた瓶は、竹カゴに入れてたんだよ」
「川のそばに工場があったので、そのまますぐ運搬できた」
「この頃から、建物などの色のルールは変わってない」
などなど、面白いお話ばかり。思い出すその方も、懐かしそうでした。





「写真だけでなく、記憶もカラーにしている」
最近私がよく言うセリフなのですが、改めてその効果が実感できる体験でした。
これからも依頼してくださる方々の気持ちを大切に、カラーライズの作業にあたりたいと思っております。