「のせでんアートライン2017」完全燃焼!
「のせでんアートライン2017」は、私がアーティストとして参加した、初めてのイベントとなりました。
「のせでん」は、兵庫県の川西能勢口駅から、古くから妙見信仰で多くの参拝者で賑わう妙見山の妙見口を結ぶ能勢電鉄。
夏休みの期間を中心に毎週週末、会場を移しながら代わる代わるアーティストたちのワークショップが展開していきます。
これまで展示中心だったこのイベントを、造形作家・友井さんと山脇さんが中心となって取りまとめ、来場者との交流するワークショップを中心とした方向に展開、なので私が参加する意味が増したのです。
というのも、私の作品と言えるものは、デジタル復元アート。制作するには独自のノウハウと創造性はありますが、独創性という意味ではなかなか伝わらないのが実情です。
そこを「制作された当時の色」を「制作された時と同じ環境」で「制作された時と同じ方法」によって鑑賞し、そのワークショップを通して日本人は本当はどんな感じで美術を楽しんでいたかを体感しています。
つまりは、体験しないと成立しないアートなのです。
特に今回は、長年夢みてた日本家屋での開催です。東京の賞道ではなるべく畳敷きの部屋で、襖を閉められる環境を選んで開催してきましたが、どうしても現代的な建築物の中に設置された和室を使用せざるを得なく、「制作された時と同じ環境」という点では不十分でした。
今回は嶋田酒店という古くからの酒屋の広いお屋敷をお借りして、開催することができました。縁側があり、上からの電灯は取り外すので、正しく外光だけの横から光だけ。なので、実は、私の方がワクワクだったのです。
まずは、床の間のある居間で「年中行事絵巻」を鑑賞します。デジタル復元アートを5本用意しましたので、だいたい各一人ずつ手で触って鑑賞していただきました。
両手で画面をスクロールすことで画面が展開する絵巻物。ここで、こちらから働きかけないと、日本美術は話してくれないことを解説します。
次は横にある狭い部屋に移動すると、「風神雷神図屏風」が待っています。
床の間に接する縁側とは反対側にある部屋、つまりは外光から遠い部屋なので、襖を閉めると真昼なのに真っ暗になります。それを利用して、ロウソクの火だけで鑑賞。
「ほら、まるで骸骨のように怖い表情になるでしょう?」とロウソクを動かし揺らめかせながら、美術館での展示では決して見せない、作品の本性を暴いてみせます。すると見る人はもう日本美術の虜です。
さらに縁側を通り、奥の座敷へ。(日本家屋の、この、どんどん奥にお客様を招き入れる動線もいいんです)
そこには、嶋田酒店が所蔵する「洛中洛外図屏風」がドトーン!と設置されております。
下見の時に拝見して、本物の屏風があればさらに楽しいので、「使いたい!」と無理をお願いして用意していただいたのです。
二隻の屏風をハの字に配置して、その間に座すと、座る位置はちょうど「御所」になります。つまりは天下人の位置になります。座ればあなたも天下人。このような体験は、早々できるものではありません。
また、手前で見る側は、京を背にする天下人を拝する形になるので、自ずと「はは~」となるわけです。その金屏風の輝き方も、やはり横からの外光を受けて柔らかく光り、中に座す人の威光をたたえる仕掛けになっています。
そして最後、隣へ続く襖をバーン!と開くと、白い大きな箱が登場します。そう、高松塚古墳壁画のレプリカです。
お子様も参加するイベントなので、急きょ展示することにしました。中に横たわるだけで、飛鳥時代へタイムトリップできるからです。夏休みの絵日記に、最高の題材ではないでしょうか。
「歴史秘話ヒストリア」でもご紹介したあの高貴な飛鳥美人と視線が会うたび、中から感嘆ともどよめきともつかない声が聞こえてきます。
口々に「思ったよりスッキリしている」「このまま寝れそう」という感想をもらしていたので、仏教が普及する前の人々の死者に対する心情にも想いを馳せながら時代背景を説明いたしました。
という感じでやって参りました私のワークショップ、作品を使ったパフォーマンスという意味では、他のアーティストに比べちょっと傾向が違っていましたが、これほど与えられた会場を使い倒したワークショップはなかったと思います。
私としても日本家屋で十分楽しめたこの経験を生かして、これからの賞道をもっとダイナミックに展開してきたいと思います。
搬入から撤収まで色々な方々にお世話になりました。
特に友井さん、山脇さん、藤沢さん、瀧野さん、安田さん、茨木さん、荒井さん、そして嶋田さん、本当にありがとうございました。
ちなみに、今週末は「のせでんアートライン2017」最終週「妙見山編」です。皆さま、ご都合があいましたら是非ご参加ください。先日のUFOを呼ぶイベントでは、本当にUFOが来るほどのパワフルな芸術祭です。