とどけ未来日本人へ

とどけ未来日本人へ

 暮れも押し迫った12月27日、大阪府の公立小中学校の美術教師を対象に、デジタル復元の作品3点を ”賞道的に” 鑑賞していただきました。忙しくせわしない年の瀬に、20名近くの先生にお越しいただき、熱気むんむんの鑑賞会になりました。

 体験していただいたのは、「鳥獣戯画」「高松塚古墳」「日月山水図屏風」。賞道を体験していただいた方にはお分かりいただけると思いますが、なんとも《ぜいたく》かつ《もったいない》とも言える、濃縮の講演です。

 最初は、正直、反応はいまいちに感じられました。そこで私はしきりにうなずいて下さる先生に話しかけるようにして進めました。考えてみれば、普段から生徒を前に饒舌に語って指導している皆様、いくら私が人前に話すことに慣れているとしてもプロの皆様は容易になびくはずはありません。

 でも、いざ体験の段階になると、反応はがらりとかわりました。やはり、賞道の醍醐味は体感するほかにありません。
 高松塚古墳に身を横たえる。ある一人の女性と視線を合わせる…。
 自然と質問が出てきます。
受講者A「死んだ方は、実際には目を合わすことはないですよね、死んでますから」
小林「はい。でもポイントは、この絵を描かせた人の想いです。どうしてこの女性は死者を見下ろしているのでしょう。そのように描かせたのでしょう」
 それを説明するために、もっと時間が必要なのです。だから《もったいない》。

  日月山水図の迫力ある画面。なんと、山と山の間から顔を出す日輪の下に、寝そべる人が!
小林「先生!さすがです!賞道の鑑賞法をすでに実践されていますね!」
受講者B「はい、この部分が山越阿弥陀になっていることを聞き、実際の(寝床で阿弥陀仏に迎えられる)状況を試してみました」
小林「実は、山越阿弥陀図屏風もデジタル復元してあって、本当の体験ができますよ」
受講者B「ええ~、それは体験したい!」
 はい、賞道に参加いただければ、より深い鑑賞の世界へ浸れます。ですから、これで終わりだと《もったいない》。

 正直、学校の先生という方々は、新しいものに積極的ではない場合も多いことは覚悟しておりました。しかし、美術の先生はやはり感覚が柔軟なのでしょうね、ほとんどの方がすんなりと新しい鑑賞法の面白さを理解し、堪能されていました。
 その体験を授業に生かし、未来の日本をしょって立つ学生たちに、「生きた日本美術」を伝えていってもらえたらうれしいです。