びっくり展開の講演、結果、大盛況でした

 9月19日に開かれた久しぶりの講演会のお題は「日月山水図屏風 ”循環”の神秘」、会場は、その至宝がある河内長野市の市民交流センターKICCSでした。 今回の大きな目的のひとつは、新しく制作したデジタル原色復元「日月山水図屏風」のお披露目でした。あれ、日月山水図なら、すでにあるはず、私は原色体験をもうしている、と思われる方も多いと思います。そうです、それはそれでありますが、前作はいわば大道具的なもの。今回は、卓越した美術印刷で知られているサンエムカラーの技術協力のもと、完全なる美術品として作成されました。なので、近くで見ても本当の絵のようで、しかも「カサネグラフィカ」という技術を駆使して、岩絵具のテクスチャーも再現、まるで本物のようなオーラをまとっています。

 前日、屏風を確認し梱包に立ち合いました。これで一安心。当日、サンエムカラー関係者が届けてくれることになっています。 コロナの影響による久しぶりの講演なので、わくわくの中にも緊張している私でした。でも、新作の復元「日月山水図」をご覧になれば、その作品の迫力で見る人を惹きつけられるに違いありません。

 さて翌日、会場に着いて、慌ただしく準備にかかります。パソコンをつないで、動作を確認し、そして屏風を荷解きして、まだ中身は見せたくないので、閉じたまま立てかけておきます。 でも開いた時に上下が反対ではいけません、中身を開いてみました。

「ええ!」

 背筋が凍りました。 全く違う絵が目の前にありました。頭が真っ白になりました。 後から分かったのですが、サンエムカラーから、同じタイミングで別の屏風も発送の手配がされ、どうやらそれと取り違えたようなのです。なんということでしょう…。

 もう到底間に合いません。腹をくくります。もう、自分の持っているありったけのサービス精神で、語り尽くすしかありません。 予定になかったエピソードを組み入れ、商売道具の美術年表を無料で配布、身振りも大きめに話し続けました。

 あっという間の90分。どっと疲れました。マスクもしてましたのでもう酸欠状態。長距離を走ってきた感じで、息が上がってました。
 その場での質疑応答では、誰もいなかったので、一生懸命が伝わらなかったか、と残念な気持ちになりましたが、終わってから何人か熱心に質問して下さる方がいて、確実に伝わっていたようでホッとしました。
 おおむね感想も好評のようでした。

 それで結局、屏風は後日約2週間、同じKICCSの3階ロビーに展示されることになり、かえってじっくりゆっくり鑑賞いただけることになりました。
 災い転じて福となす、とはこういうことかもしれません。