風神雷神図屏風 俵屋宗達

視線のトルネード

もっともポピュラーな日本美術といってもいい俵屋宗達の「風神雷神図屏風」。デザイン的にも、キャラクター的にもアイキャッチなこの屏風、この作品をさらにどう楽しめは、いいのでしょう?実寸大のレプリカを使ってわかった秘密は、ふたりの視線。ふたりがにらみ合っている印象を受けますが、よく見ると微妙に違っているのです。彼らの視線は屏風から前の方に飛び出しているのです!向かって左手からやってくる緑の風神は、視線は前に飛び出しているものの、その視線はやはり白い雷神を見ているように見えます。しかし、一方の雷神の視線は、もっと手前、ちょうどふたつの屏風の真ん中手前へと注がれていました。ですから、ふたりの真ん中に座って鑑賞者が雷神を見上げると、まさに視線があうような感じに!その視線に威圧感を覚え、鑑賞者はもとの風神へと視線を送ります。すると風神はまた雷神へと視線を注ぎ、さらに雷神は鑑賞者を見下ろして……。これぞ、視線のトルネード!
どこに座って鑑賞する?

骸骨をさがそう!
【さらに】情報として、とっておきのお話をしましょう。「風神雷神図屏風」は金屏風ですから、もちろん光っているのですが、美術館のような上からの照明では、十分に輝きを得られません。もともとあった日本家屋は、庇(ひさし)が長くて、外光は横から入ってくることになります。特に夕陽などは赤い光が直接入ってくるので、金屏風がやさしく輝き出すのです。金は輝き、絵の具の方はそれよりも落ち着き色が沈んで見えます。すると、風神雷神のシルエットが強調され、浮遊感が増しているのが分かります。

