奈良の賞道は、やはり深い。
約1年ぶりに奈良にて、「賞道のすすめ」を開催しました。
会場は、猿沢の池からほど近いホテルサンルート奈良です。こちらには、社長の中野さんをはじめ、スタッフの皆様に本当にお世話になって、お陰様で充実した内容となりました。
いらした方、ホテルの皆様、改めて御礼を申し上げます。
今回のお宝は「年中行事絵巻 祇園御霊会」。いわば「テッパン絵巻物」です。
例のごとく、みな様にくるくるしていただこうというわけですが、ここは奈良の地でやりますので、どうせなら一工夫してみたいということで、「祇園御霊会(今の祇園祭)」と奈良の春日大社で12月に行われる春日若宮の「おん祭り」を比較しながら、お話を進めてみました。
この二つの祭りと「祇園御霊会」の関係性って、とても面白いのです。
まずは9世紀にはじまったのは祇園御霊会の方でした。そして、12世紀におん祭りが始まるのですが、それとほぼ同時期に「年中行事絵巻 祇園御霊会」が描かれています。
絵巻物に描かれる祭りの様子は、今の祇園祭の姿とは異なっています。というのも、今のような山鉾の大きな山車が街を巡行するようになるのは室町時代からとされ、「年中行事絵巻 祇園御霊会」には山車が登場しない「祭りの原型」が残されているのです。
そしてさらに注目するべきことは、その様子が、今のおん祭りとそっくりなのです。
デジタル復元した「年中行事絵巻 祇園御霊会」には、祇園社(今の八坂神社)から祭神を神輿にお乗せして、御旅所までお連れする行列が描かれています。その行列には、田楽、巫女、散手(雅楽)、獅子舞と続き、最後に神輿が登場するという順序になっています。
これをくるくる手で繰り出すと、目の前を行列が通り過ぎていく、観客の目線になるしかけなっていて、その目線を楽しむことがこの作品の醍醐味です。
「おん祭り」も実は、お渡り式という、祭神を御旅所でおもてなしをする者たちが行列をなして行進する儀式があり、それが絵巻物そっくりなのです。つまり、絵巻物の世界が、現実に飛び出したように目の前で展開されるのですから、私はなんとも不思議な感覚になりました。
「おん祭り」は始まった当初から現代に至るまで途絶えることなく続けられているという話ですが、さすがこの900年の間に、変化というものがあるだろうと想像していました。しかし、図らずも変わらずにしっかりと伝えられているということを別の祭りの絵巻物が証明していることに、驚きを感じます。
さらに驚いたこと、発見がございました。今回、本当に「おん祭り」と比較して本当によかったと思いました。
というのも、下の図、田楽の次に登場するこの騎馬の男たちのことを、私はずっと行列を警備する者たちと思っていたのです。しかし、それはおそらく競馬をする者たちであろうことが分かったのです。
実はおん祭りのお渡り式の行列の中に、同じような格好をした騎馬の男たちが登場し、それが競馬の競技者たちだったことから気づきました。
私は不思議でならなかったのです。
田楽、巫女、獅子舞と演目が続く中、なぜ突然、芸能に関係ない警備が登場するのだろう、と思っていました。でも、この騎馬の男たちも演目のひとつであることが分かり、すっきりしました。
ということは、彼らが着ている装束は統一している可能性は低く、色を変えなければならないことが分かりました。
こういう宿題はむしろ大歓迎です。
奈良で開く賞道では、歴史の深さが導く大きな驚きと発見があります。
本当に、導かれている感覚がするのです。
当日、毎日放送の「ちちんぷいぷい」の取材がございました。賞道の面白さ、驚きをお話ししましたのでOAを見ていただければと思います。
今のところ、恐らく9月12日(木)13:55~の放送かと思います。
よろしかったら、ご覧ください。
次回の9月21日(土)~23日(祝)3日連続で同じくホテルサンルート奈良にて開催されます、「賞道のすすめ 高松塚古墳」の告知も番組ではあるかと思います。
あわせてご覧いただき、よろしかったら「飛鳥美人と視線を交わす異空間」を体感しにぜひお越しくださいませ。