【緊急寄稿】昔の対処法に学ぶ

 新型コロナウィルスの蔓延で、世界中が大変なことになっている。毎日の行動が制限され、店頭からはトイレットペーパーや備蓄品が消え、株価が暴落…。私たちの世代では今まで体験したことのない事態に、世界が不安な毎日を過ごしている。
 それでも情報化社会である。原因は新型コロナウィルスと判明し、刻々とその広がりがニュースで流れ、その対策が打ち出され、なんとか対処しようとしている。ワケが分かっているのとそうでないのとでは、心の持ちよう、覚悟が違ってくる。それだけでもいい方に考えたい。

 昔は、ウィルスなどと言う存在は知られるはずもなく、ワケも分からず疫病に倒れ、死んでいくことに、なんらかの理由を求めた。それが前回の絵巻物「祇園御霊会」でご紹介した通り、「荒ぶる神様がお怒りになっている」ということなのである。その神のお気持ちを鎮めるために、舞などを奉納する祭りを敢行する。科学的ではないが、精神衛生上では、立派な対処法である。祭りによって生きる力を復活させ、困難な現状に立ち向かい対処しているのだ。
 ちなみに、その対処法が科学的に正しいかどうかの話ではない。未知の災難に対して、どう気持ちを鼓舞して戦い続けるか、あるいは希望を捨てずに生き続けるか、精神衛生上の話である

 このように疫病というものは昔の人にとってはより厄介なもので、目の前に起こっている余りにも厳しい現実をどうにかして理解しようとしていた。それが絵物語のようになったとして、今の私たちがどうして笑い飛ばすことができるだろう。

 いい作例がある。「辟邪絵(へきじゃえ)」と言う。まるでウルトラマンの怪獣図鑑のように、グロテスクな伝説のキャラクターが紹介されている絵巻物である。このキャラクターは、どれも正義の味方である。ご覧いただいているのは、「天刑星(てんけいせい)、疫鬼を食らう」という題名。
 天刑星は、紫微斗数(しびとすう)という中国の星を使った占いに登場し、孤独を象徴するとされる一方で、医学も司るとされている。

 善神の天刑星は、人々を疫病で苦しめている牛頭天王(ごずてんのう)をむんずとつかんで食らおうとしている。宙ぶらりんとなっているのが牛頭天王である。この牛頭天王が実は祇園祭での主役、夏になると今日の人々を苦しめている疫病の張本人なのである。

 牛頭天王の分かりにくい顔を復元してみた。なんとも情けない顔が出てきた。疫病が、徹底的にこらしめられている様子を、私たちはばかばかしい絵空事のように見るだろうか。当時の人々の、疫病をやっつけたい気持ちは、今正に私たちの心情である。

 その後、牛頭天王は、不思議な展開を遂げる。疫病をもたらす厄介者だった牛頭天王が、なぜかいい神として人々の信仰を集め、大きく浸透していったのである。その発展の中で、牛頭天王は素戔嗚尊(すさのおのみこと)と同一視され、さらに発展していく。
 疫病がついに人々を支配してしまったということだろうか。そんなことが、あってはならない、と、今はそれだけ祈るばかりである。

「松右衛門」立ち上げと、早速の商品販売

やっとお知らせすることができました。
賞道のすべてが遅れてご迷惑をおかけしている理由のひとつとして、
新ブランド「松右衛門(まつえもん)」の立ち上げと商品開発がありました。

色々と詳しいことは、随時サイトにアップしていくとして、
まずはこんな商品です。

●「風神」A4サイズ(21x30cm)
タッセル付・・・7,500円
タッセル無・・・6,000円
●「花下遊楽」A4サイズ(21x30cm)
タッセル付・・・7,500円
タッセル無・・・6,000円
●「風神」A3サイズ(30x42cm)
タッセル付・・・30,000円
タッセル無・・・20,000円
●「花下遊楽」A3サイズ(30x42cm)
タッセル付・・・30,000円
タッセル無・・・20,000円

実はもう販売がゆるりと始まっていることをお知らせいたします。
昨日16日から18日までの三日間、新潟伊勢丹にて、
(新潟三越とお知らせしてしまいました。お詫びして訂正いたします)
インテリア茶箱に添えられたアイテムとして販売されています。
しかもあの知る人ぞ知るセレブの丹青会での展示です。
すでに「売れた」との情報も耳に入って参りました。幸先いいようです。


さらに、予定では3月7日~20日と割と長めに新宿伊勢丹にて、
インテリア茶箱とのセットとして展示され(別売りもOK)販売されます。
こちらはしっかりとお知らせします。
どうぞ、ご期待ください。

インテリア茶箱についてはこちら。
インテリア茶箱クラブ

通販も検討しておりますが、まずは百貨店での反応を見ながら、
よりよいサービスを目指したいと思っております。
その間に、当サイトにて商品のコンセプトや新情報などをアップいたします。
もう少々お待ちくださいませ。

「にっぽん!歴史鑑定」撮影終了!

BSのTBSで毎週月曜日夜10時から放送されている「にっぽん!歴史鑑定」ですが「国宝ブーム」の波にのって私を取り上げてくれ、3回に分けてロケを敢行、先日、やっと撮影が完了しました。
最終日の朝は、冷たい雨が降っていました。





今回は、なんか長く感じられました。なんでだろう。
きっと、他の仕事や打ち合わせの合間をぬって関西に戻って撮影したこともあったりして、もうてんてこ舞いだったからかでしょうか。
花下遊楽図屏風の制作も進めてでしたから、今うしろを振り返ってみると、たくさんの絶壁や崖があったのを見てぞっとしているという感じです。(実は、まだその道は続いておりますが……(;^_^A)





はじめは六本木のスタジオで、番組のパーソナリティーである俳優の田辺誠一さんの収録現場へ。
途中ごいっしょして絵巻物の鑑賞法をご紹介しました。
淡々として真面目に仕事をこなす田辺さんでしたが、「ガラス越しに見ている広げられた絵巻物では、面白くない」というところに強く反応して下さいました。そこは使ってほしいなぁ。
何かちょっとでも田辺さんの心に響くものがあったら嬉しいです。





二回目のロケが、日本家屋での風神雷神図屏風の鑑賞でした。
なんと「のせでんアートライン」で使用させていただいた「嶋田商店」の邸宅をまたお借りすることができました。
ホント、イベントのまとめ役の一人・友井さんには本当にお世話になりました。
忙しい方なのに、何から何までして下さるので恐縮しておりましたが、「実は、のせでんアートラインだけでアーティストと地元の方々の交流が終わってしまうは良くなくて、今回みたいにそれ以降も交流が続いたり広がったりすることが大切」とおしゃっていただけたので、何か安心いたしました。
ホント、心のおっきい人です。





そして、先日は、私の復元作業現場の撮影です。
過去の自分の作成してきたデータを呼び出してきて、何か懐かしく思ったり、まだ粗が見えたりするところもあったりして……。
でもカメラマンの方が、出てきたデータを見て「お~」って感嘆の声を漏らしていたので、ちょっと嬉しかった。最初のインパクトって大切ですよね。私は見慣れすぎているので、その反応は勉強になります。





上の写真をみてびっくり。
口元が、死んだ親父そっくり。それなりに歳重ねています。
早く、ことを為さないと、歳に追いつかれてしまいますね。


今は編集が大変なことになっているでしょうね。
制作会社のnexusネクサスは、「美の巨人」「開運!なんでも鑑定団」の会社。今後、何かつながる希望も抱きつつ……。
放送は12月18日(月)夜の10時です。
どうぞご覧ください。

「ブラタイゾウ 集落の気配」方丈記的ブログ

クリスマスも終わり、今年もあとわずかとなりました。
この一年を振り返りますと、怒涛の「賞道元年」でした。でもホントに充実してました。
皆様に改めて御礼を申し上げます。




私のクリスマスは、何もありませんでした。
でもなんとなく気持ちはほっこりとしていたのです。
実は「ブラタイゾウ 第2弾 〜謎の八角堂を追え〜」を敢行していたので。




と言っても地元の裏山を散策するということなんですが、それでも色々と発見があって面白いのです。
前回は、多摩川から生田へ向かう時に越える、多摩川丘陵について。
で、今回はその道すがら発見した「八角堂跡」という、なんとも魅力的な文字が汚れた地図にあったのが気になって、繰り出したわけです。





多摩川丘陵の途中にそれはありました。
UR都市整備機構のマンションが林立している中に、ひっそりと。
団地の公園が隣にあって、分からない人は公園の一部と思っているかもしれません。それほど地域に同化してました。





実際は、その場所より13.5m高いところにあったのを、団地を造成するのに、今の位置へ移動したとあります。
「なんだ、オリジナルじゃないんだ」と思ったのですが、いやいや、移動したので、礎石などはその時代のもの。
立て札の解説を見ると、なんと平安初期とあります。藤原時代の遺構が関東のこんなところににあるなんて感動ものです。






外側の8つの礎石が確かに八角形になっいて、内側が4つの礎石が正方形。
和歌山県の栄山寺、国宝八角堂とほほ同じ大きさとありましたが、印象としてはそれよりも小さい気がします。栄山寺の八角堂は、奈良時代に建てられ、建物もそうですが内装画が見事で有名です。なのでそれを確認に2度ほど訪れています。(実際はほとんど剥落していて、一見何も見えませんが…)





基壇の石垣が、丸い石で作られるところは、この地方らしい素朴さを感じさせます。あと、時代のが早かったことも。
その一方で八角堂の瓦の写真が案内板にありました。なかなか意匠が凝っています。
このアンバランスな印象が、どういう形で八角堂としてまとまってたのだろう、と想像を巡らす…ああ、楽しい。
きっと、はたから見ると変なおっさんに見えたでしょうね…( ̄▽ ̄)




八角堂跡のそばに「寺尾台城跡」とあります。おお、これも魅了的な響きです。でも地図ではそこまでも道がないので、とにかくその近くまで。
菅馬場保存緑地として管理されている小山のてっぺんがUR、でももともとはそこにあって八角堂があって、そこからちょっと下って丘陵の突端、見晴らしがいいところに城があった、ということかも知れません。





近くまで来てみると、小さいながらもちゃんと道が作られていて、しかもキャンプ場のようなテーブルとベンチまであって整備されてました。きっと、弁当なんか持って来たら、気持ちいいだろうな…
道をたどって奥まで行くと、ここにあったであろう平地に出ました。ここに城があったに違いありません。一見石垣は見えないので、これも平安や鎌倉時代の平屋の城だった可能性もあります。機会があれば、地元の図書館でも行って調べてみます。





木々の間から、川崎市多摩区の住宅街が見下ろせます。
当時は田畑が広がっていたのでしょうか。どんな人が、この地を支配していたのでしょう。おそらくこんな人かな、という人を描いた子供向け小説をいま友人たちと書いています。いつかは発表する機会があると思います。どうぞご期待ください。
それにしてもこういう想像をめぐらせることは、賞道にも役立ちますね。日々精進です。




丘を下りていく途中には古い墓がいくつか。
予想以上に人々の営みが感じられ、また集落としての気配も感じる彷徨となりました。
いつも美術品と語らうことで感じる昔の人との対話をまったく違う角度からも堪能できて、しかも、個人の気配ではなく、複数の、集落の気配を感じることができて、1人だけどほっこりとしたのでした。




それでは皆様、よいお年をお迎えください。

「地元でちょいブラタモリ」方丈記的ブログ

地元をブラブラ、ブラタモリ。なかなか地元をぶらつくタイミングがなくて、でもやってみたら結構面白かった。




気になっていたのは、駅と反対側。
駅の先の多摩川は確認済み。そこは、住んでいるまわりは多摩川とその支流が入り組んでいて、けっこう低湿地帯な雰囲気がある。
その証拠に数日前に多摩川までいってみると、白鷺と鵜が陣地争奪戦を繰り広げ、けっこう騒がしかった。河原のそばまで葦や菅が迫っていて、鳥たちはその陰に巣をつくっているのだろう。


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なのに反対側は、丘が迫っていてうっそうと森が茂っているのが見える。
これが、奈良だったら古墳かと思ったかもしれない。
丘が見える方に歩いて5分もたたないで、丘のへりにくる。そこからは驚くほどの急こう配だ。


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感心なのは、そこにぎっしりと住宅がへばりつくように林立しているのだ。
ちょっと兵庫の六甲あたりを思い出したが、もしかするとそれよりも急激かもしれない。
見たことはないけど長崎ってもしかしたらこんな感じではないかな。


坂を登り切って思い当たることがあった。この見晴らしのよさ。ぬけ具合。
ジブリ映画でみたことがある。タイトルが思い出せないで「カントリーロード ジブリ」で検索してみると「耳をすませば」と出てきた。


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お~、そうだそうだ。
とさらに検索してみて、それに相当する画像を見てみると、ほぼ当たっている。
というのも「耳をすませば」の舞台は、近くの聖蹟桜ヶ丘ということになっている。
要するに多摩川丘陵の景色であることでは、ここもジブリも同じだということだ。


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丘を越えて向こう側には、小田急線の生田駅である。
急こう配の中に街が展開していて、何かちょっと温泉街の雰囲気があるのがおもしろい。
コーヒーショップに入ってしばし外を眺めているだけで、ちょっと旅行に来たような気分になった。




帰りもえっちらおっちら、丘を越えて帰ってきた。
こんな見晴らしのいいしかも小高い丘なら、戦国時代は城があったろうな…
と思ったとき、地元の駅前のバス停が「城下」というのを思い出した。


きっと、何かある。
次回は、そこら辺をしらべながら、ほっつき歩くとするか。

「違和感の5%」方丈記的ブログ

久しぶりに雑誌を買った。しかも似たような傾向の二誌で、ひとつは「ソトコト」で、もう一つは「pen」である。


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「ソトコト」の特集は、「日本の森で起きていること」。なぜか最近、林業をめぐるご縁が浅からず、林業の最先端を知りたくて、しかも”現代の庶民感覚”で知りたくて、思わず手に取った。
少人数で、林業をしているグループがある。本業を持っていて、その本業の閑散期を中心に林業をしている。これは非常に参考になった。
少人数で無理なく。ガッツリやらないで、でも収益は出る。山は生き続ける。これは理想的だ。もうひと段階進んで、「週末林業」なんてことができれば今風で面白い。




昔気質(かたぎ)の林業者は、「そんな甘っちょろいもんじゃない」と言っていたそうだ。
でも、そこで何もしなかったら山は荒れたままだし、現に手入れを始めたら山は復活し、閑散期の収益も上がり生活が安定したそうだ。
そして、山が地域コミュニティーの舞台になる例も掲載されていた。林業って、いや山って実に可能性がある、それこそ「宝の山」なのだ。




でも、昔気質の林業者の気持ちも分かる。
今の若い人が合理的に、しかも器用にやって効果を上げている。素晴らしいんだけど、私は「違和感」を覚えるのも事実。今まで人々が培ってきた伝統、文化が置いてけぼりになっている気がするのだ。昔気質の人々の気持ちも大切にしたいものだ。
私はいつも、現代人の合理性の快適さと、昔の人々の伝統を守る誇り(生業の動機)の間で揺れている。


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「pen」の特集「移住しよう」を読んでいての「違和感」は、もっと強いものだった。
都会から田舎に引っ越して、定住する。地域の人々に受け入れられ、都会では味わえなかった、人と人との結びつきの大切さを体感する。そんな理想的な成功例が続いていた。
これは間違いなく素晴らしい。特に私よりも若い世代は、人と人とのコミュニケーションに欠乏している面があって、自然とそういう動きとなって人間らしさを取り戻すのも道理だと思う。




実は私は、移住に成功できないで東京に戻ってきた、と言ってもいい。デジタル復元と賞道は自分しかできないので固執していると、地元では到底仕事がない。実に当たり前のことである。でも、家族を養わなければならないので、デジタル復元は趣味にとどめ、普通の仕事に就こうと職探しもした。
同じ時期に東京圏から兵庫へ越してきた他の家族は、今までのキャリアをかなぐり捨てて、地元に溶け込もうと並々ならぬ努力を重ねている。それこそ、地元の伝統やしきたりに気を使いながら。
雑誌にあった成功は、この努力、苦労の部分が極端に少なく、すんなりいったように書いてある。実にスタイリッシュで、軽い。でも、移住の成功はこの伝統との葛藤が上での結果であってほしい。できれば伝統の中にある合理性にも注目できる思慮深さと洞察力がほしい。




結局、移住が成功できなかった人間の、嫉妬である。考えてみれば、この「違和感」95%は、情けないことに嫉妬だ。遠いけれども見えている成功の道を力強く進む人を横目でみながら、成功の確証という目的地のない平原を歩いている人間の、不安の裏返しに過ぎない。
でも、残り5%の「違和感」は、合理性が優先されて、日本らしさ、日本人らしさの根本が後回しになっている視野の狭さに対する危惧なのだ。




それは、ちょうど本当の日本美術の在り様を見失っている現代人が、「わびさび」の見た目に振り回されている姿と似ている。
たった違和感の5%。でも、私にとっては無視できない重要な部分。

「賞道のすすめ」が、アーツカウンシル東京より助成を受ける事業に選ばれました!

このたび、平成28年度アーツカウンシル東京の東京芸術文化創造発信助成(単年助成プログラム第2期)を受けることとなりましたので、皆さまにご報告いたします。

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アーツカウンシル東京とは東京都の方針の下、東京における芸術文化創造のさらなる促しや東京の魅力向上を図る事業をしており、助成もその事業のひとつになります。1年間、活動に関する諸経費の一部にサポートが受けられます。

「賞道のすすめ」は講座での復元美術品の体験のみならず、開講前の小宴や呈茶など、すべての時間を賞道の一環ととらえていますので、複合分野での申請をおこないました。「革新性・独創性や影響力・普及力の面で期待できる事業を、当助成ガイドラインに基づき採択(分野別全体講評より)」と評価いただいたことはとても励みになります。同分野では採択率22.2%(全体採択率は43.7%)と狭き門でしたので、気が引き締まる思いがします。

なお一層賞道の時間を豊かにするべく、活用させていただきます。引き続き賞道へのご理解・ご支援をよろしくお願いいたします。

 

平成28年度 東京芸術文化創造発信助成【単年助成プログラム】第2期、及び平成28年度 芸術文化による社会支援助成第2期 対象事業決定のお知らせ(アーツカウンシル東京内リリースページ)

https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/news/14760/

(広報:小犬丸)

「唐が残ってるニッポン」方丈記的ブログ

昨日、ラジオを聞いていて、日本で中国語教師している陳氷雅さんが実に面白いことを言ってました。


「ニッポンには、唐が残ってるんです」


中国人から見ると、失われた唐が日本に生き生きと残って見える!
着物は、唐の衣装そのもの。仏像、寺院も大切にされ、残っている。漢字もそう、唐時代のものを使っています。そして、漢字の音読みも、唐時代のサウンドを残しているのだとか。(中国の国語学者も、時に日本の音読みから原形を知るのだといいます)そして歌舞伎。中国に京劇があって、歌舞伎のルーツと考えられますが、京劇は一度、途絶えていると言ってました。(ただし、これは唐時代ではありませんね)


これは驚きです。
いや、考えてみれば、あらゆるものを大切にしてきた日本人、昔のままの形で今に伝えるものはきっと多いに違いないと思います。
しかし、矢継ぎ早に大陸から入ってくる最先端文化を日本人らしく消化&昇華して、日本文化を築き上げてきた、と私は思っていたのです。元は大陸だけど、80%はもう日本文化でしょ、という感覚でいたのです。
でも、そのパーセンテージ、50%くらいかも知れません。少なくとも、中国人が唐の時代をビンビンに感じる程に残っているわけですから。



大陸文化は偉大すぎて、早々アレンジができるものではない、とも考えられます。
だからと言って、日本文化に特徴がないわけではありません。アレンジを加えて、輝かしい文化を今に伝えてることも変わりありません。
私が一番疑問に思うのは、日本人の「ありのままを見てみよう」という姿勢が、なぜか日本美術に対しては十分はたらかないところにあります。
大陸からの文化をそのままに受け継いでいた部分が、今まで思ってたよりも大きいかもしれない、と言っただけで、日本美術の価値が低くなるように感じる人もいるかもしれません。
でも、文化の優劣を図る物差しってあるんでしょうか。私は、そこには「人々の営み」しかないと思ってます。
受け入れ、アレンジするものもあったし、そのまま残すものもあった。それだけです。でも、それだから、愛おしい。



反対に、中国の方も、日本に残っている唐の欠片を発見して、自分たちが影響与えたと感じて優位性を感じるのも違うでしょう。
自分たちが大切に残せなかったものが、ここには残されている。それだけ。
残せなかったのも人であり、残したのも人であります。それだけ。
人だから、人のすることはすべて愛おしい。


あ、あと、日本人だから、大切にものを残してこれた日本人には、やはり愛着を感じます。
文化は残っていてナンボですから。

「ものについて」方丈記的ブログ

三越本店で開かれていた「千家十職新作展」に行ってみたところ、あまりの混みように驚いた。と、同時に、茶道具の魅力というのは、ホント麻薬のようなものだと思った。
もちろん、一品一品素晴らしいものであり、賞賛に値する。でもそれが、人を狂わせるほどの魅力を持ってしまったら、結果、展覧会のような醜態となる。
「もの」は、汚されても、傷ついてもいいから「もの」なのだ。使ってみて「いいね」と褒められる程度でいい。「用の美」とも少し違う。「美」という四次元的なものは、到底「用」という三次元と結びつかない。
もし、その「もの」が、「用の美」であるならば、それは「もの」の域からじわりと滲みだし、醜聞を導きかねない麻薬と化しつつあるのだ。魔薬と言ってもいい。
あるいは、悪魔に触れられ箔がついてしまったか。


深く知らず、完全に食わず嫌いだが、茶道が苦手である。
大上段に構えながら、私には崇高なる精神が感じられない。(あくまでも私には、である)深く突きつめれば絶対あることは分かっているが、、茶道を通して知りたくない。茶道という繰り返されマニュアル化したプロセスを通して、導かれるようにして知りたくないのだ。それに、茶道は真、魔物である。
自分の体の中で、どうしても拒否反応がある。魔物を相手にする恐怖かもしれないが。
※賞道にご参加いただいている、まるも茶屋と茶師の神崎さんに関しては、その活動方針とおもてなしの心について完全に理解して賛同しております。


崇高なる精神。
天皇がサウジアラビアの皇子と対話している写真が、有名になった。何もない簡素な空間に、椅子にテーブルだけ。飾りはテーブルにある花だけである。
私は、この写真に、崇高なる精神を感じる。茶道が言いたげな「わび、さび」と異なる「わび、さび」を感じる。
このような欠片をたくさん集め、俯瞰したときに、私の求める「わび、さび」が見つかるか、それは私にも分からない。


もう一つの欠片を、「映画監督・小林正樹」展で見つけた。
戦場で日記や小説を記した手帳。開かれたページには、白黒の薬師寺の薬師三尊の写真を貼ってあった。
これぞ「もの」である。何のてらいもないが、気持ちが染みついた、世界にたったひとつの「もの」。それは、当人以外に価値がない、だから「もの」なのである。


やはり「わび、さび」に崇高なる精神を求める私は、「もの」を通して人を見ているようだ。
その人がどのように生きて死んでいくか、そこに共鳴できるか。
なるほど、今の茶道具を見てまったく響かないのは、そこらへんにありそうだ。

篠原ともえさんのラジオ番組に出演します

シノラーで一世を風靡した篠原ともえさん。今は仏像ガール、宙ガール(そらガール)でも有名です。
来る9月18日(日)、篠原ともえさんがパーソナリティをつとめるラジオ番組「日本カワイイ計画。 with みんなの経済新聞」に小林が出演します。

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テーマは仏像。

先日の収録では、時間を大幅にオーバーして盛り上がったこと!
ともえさんは、特に奈良時代の仏像の色合いに興味津々。ともえさんの口から「紺丹緑紫(こんたんりょくし)」というな言葉が出てきたときは、びっくりしました。
これは当時の色具合を示した言葉なのですが、もう専門中の専門用語だったからです。

そんなこんなで番組では、仏像の衣服は元は非常に派手であったこと、なぜそんな鮮やかな色であったのか…篠原ともえさんと共に仏像ファッションのカワイイを楽しみます。ラジオをお持ちでないかたもアプリで聞くことができますので、ぜひお楽しみに!

●番組:JFN系ラジオ(全国FM放送協議会)「日本カワイイ計画withみんなの経済新聞」
●放映日時
:FM岩手 ・・・ 9月20(火)12:00~
:ふくしまFM ・・・ 9月18日(日)6:00~
:FMぐんま ・・・ 9月19日(月)11:30~
:RADIO BERRY(栃木)・・・ 9月18日(日)8:30~
:FM‐NIIGATA ・・・ 9月18日(日)18:30~
:HELLO FIVE(石川),FM福井,FM GIFU ・・・ 9月18日(日)5:30~
:レディオキューブ三重FM ・・・9月23日(金)16:30~
:e-radio(滋賀)・・・ 9月18日(日)18:30~
:FM岡山,V-air(鳥取、島根)・・・ 9月18日(日)8:30~
:FMY(山口),FM香川,FM徳島,Hi-Six(高知),FMS(佐賀)・・・9月18日(日)8:30~
:FM長崎,JOY FM(宮崎)・・・ 9月18日(日)9:30~
(念のため、各放送局のタイムテーブルをご確認ください)

●上記以外の地域で番組を聞くには・・・

・スマホアプリ「jfn park」をダウンロード。
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・いつも聞くFM局を選定します。

・会員登録をします。(メールアドレスを登録。そのメールアドレスに仮認証コードが返信されます。仮認証コードをコピーして、アプリのコード欄に入力。最後パスワードを設定すると会員登録完了です)

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・検索結果「日本カワイイ計画 withみんなの経済新聞」をタップ。
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・「日本カワイイ計画」のトップに出ます。ちょっとだけスクロールダウン。
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・「音声コンテンツ」をタップ。
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・最新の音声コンテンツ(左上・小林泰三出演9月18日、Vol.51)をタップ。サイトに音声コンテンツがアップされるには、放送後、数日時間がかかるようです。ご了承ください。
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●番組公式サイト:
https://park.gsj.mobi/program/show/24651

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※写真は番組公式twitter、篠原ともえさん公式ブログからお借りしました。

(広報 小犬丸)(更新 小林)