着色のできること

ほぼ一年ぶりの「色再アルバム」の更新です。
どうしても、今、他の仕事を中断してでもしなければいけないと思って、必死にやりました。
この写真のカラーライズです。
でも、別に仕事として受注したわけではありません。今日、色々と感じ入ることがあって、自分のためにやりました。





写っているのはドロシー・カウンツ(Dorothy Counts)。
1957年に、白人しか通っていなかった高校に入学したアメリカ初の黒人女子高生です。
どんなに奇異な目で見られていたか、嘲笑されていたかは、後ろの人たちの様子を見て明らかです。
実際にひどい迫害を受け、「このままでは生命が保証できない」と4日目に退学することになります。




なんで私は、急にこの写真を色つけなければ、と思ったのでしょう。
たぶん、今日が9月11日だったから、ということもあるでしょう。
そして、セレーナ・ウィリアムスが全米オープンで主審に罵声を浴びせ、会場のブーイングで、勝者の大坂なおみに悲しい思いにさせたこともあるでしょう。
なんか、今も全然変わってないんだ、という気持ちが、だんだんともたげてきました。




もう一つ、どうしてもカラー化しなければ、と思うに至ったきっかけがありました。
この写真をAIで自動カラー化した写真を見ながら、「61年後の今、ニューラルネットワークによってよみがえった負の歴史は、これからも色あせることはないのだろう。」という記事を読んで、何か残念でならなかったのです。





これが、ニュートラルネットワークなる、AIのディープランニングを利用してたくさんの白黒写真、カラー写真をコンピューターに覚えこませ、自動でカラー化するプログラムを使った結果です。
これが、全然よくないのです。
これでは、何も伝えていないのも同然です。
「負の歴史は、色あせない」という記事の言葉は到底、心に響いて来ません。




記事を書いた方は、きっとカラーライズのことは余り知らないかもしれませんが(でも、それを安易に記事にしてお決まりの言葉をつけるのは感心しません)、このカラーライズの作業をしてSNSにアップした人は、有名大学の教授で情報デザインとデジタルアーカイブの専門家でした。
カラーライズにも色々とレベルがあって、それは適材適所に使わないと成果は期待できないということを、知っているはずの方からの発信なのに驚きました。
あまり考えずに、ポッとアップしてしまう感覚が、Web記者だけでなく専門家にまで浸透していることに危機を感じます。
(私も、油断するとやってしまいますが……)




こういう時のカラーライズは、クリック一つではなく、一つ一つを吟味して慎重に、気持ちを込めてやるのがいいと私は感じています。
気持ちを込めた復元が、どれだけAIカラーライズと違うか、どうしても確かめたくなりました。
丁寧に一つ一つ復元していくとき、その人たちの気持ちを想像したり、当時の時代の空気を考えたりしながら進めます。
復元していくと、背景にいるのは子供たちだけでないことに気づきました。大人も見られます。想像よりも厳しい世界なのが分かってきました。





私が復元した画像です。
ご覧いただいている皆さんに、感想は委ねます。
今日私が引っかかっているのは、実はカラーライズということではないのかもしれないからです。
最近、世の中から「慎重さ」「謙虚さ」「畏怖」などがなくなってきていることが心配です。
思ったことをすぐに発信して、それにすぐに反応して、また反応して、拡大して…… いつ反省するのでしょう。




私はいつも立ち止まって、反省ばかりです。
次の画像を発見して、早速、反省させられました。





見事です。負けました。
欧米の方がカラー化したのではないでしょうか。感覚がやはり違います。
空気がドライなのが分かります。私の方は、なぜか湿気があります。ホントに不思議です。
コダクロームと富士フィルムの差があるようで、面白いですね。

でも、NHK「よみがえる東京」では、私のこの湿った色彩感覚が活かされていた、ということですから大丈夫です。
私は私の表現を追求します。

カラー化の意外で大きな効能

カラーにするということは、ただ色をつけるということではないようで、毎回、色々と学ぶことが少なくありません。




一年半前、新木場の瀧口木材さんから、色あせた航空写真を復元できるか、と相談を受けました。復元の経緯はすでに記事にしているので(「昭和50年、新木場空撮写真を復元」)そちらをご覧いただきたいのですが、この仕事によって予想もしなかった「カラーライズの真価」を知るきっかけになったのです。





その名の通り木場としての機能、そして文化が劇的に変化しつつある新木場。瀧口さんは昔の木場の活気を復活させようという熱意をお持ちです。
そんな瀧口さんなので、もとの姿を取り戻した復元の成果を大変喜んで下さいました。確か80枚も焼き増しを発注され、それを地元の企業の方々に配ったほどです。
それだけではなく、額装したものを地元の銀行に貸し出して、そこにいらっしゃるお客様にも懐かしい新木場の姿を紹介しました。





感激した私は、そこでもう一歩前へ進めるために、瀧口さんなMさんを紹介しました。
Mさんは、東京で賞道を初めて開催するときに全面協力して下さり、本業の建築やインテリアのデザインと製作と実行力で、伝統産業や地方文化の再興にも積極的に心血を注いでいるスゴい人です。




私は自分の賞道を立ち上げたばかりで手一杯でしたので、その紹介だけで終わってしまいましたが、瀧口さんとMさんの活動は続き、また地元の別の木材関係企業を巻き込みながらだんだんと活動を具体的に、また拡大させております。
それが「海床(うみどこ)」プロジェクトです。





京都の川床は有名ですが、それの言わば海版でしょうか。かつて保管などのために木材を浮かべていたところに、床を浮かべてレジャーを楽しむので、川床のよりも直接水と接するワケですが、ゆらゆら揺れたりして却ってそれが面白そうです。
具体的には10月8~15日に実施され、アーティストの木にまつわる作品展示やミニコンサートもあるようです。スゴい!




そこに人が集い、また繋がりが生まれ、さらに展開を遂げる。そのキッカケが一枚のカラーライズした写真と言うのが嬉しいです。
ホントにカラーはスゴい力を秘めているんですね。




最近、ある企業から白黒の工場の航空写真をカラーにしてほしいとの依頼がありました。
恐らく昭和30年代初めの様子。化学工業の工場で、カラーに仕上げた画像は、パネルにして一階ロビーに飾るのだとか。
そこにもただカラーにする以上の、関係者たちの想いが伝わってきます。





カラー化する際に、その工場の様子を知っている方に取材を致しました。その時には、ある程度彩色したものを持っていきます。その方が、色々と思い出しやすいからです。
「薬品を入れてた瓶は、竹カゴに入れてたんだよ」
「川のそばに工場があったので、そのまますぐ運搬できた」
「この頃から、建物などの色のルールは変わってない」
などなど、面白いお話ばかり。思い出すその方も、懐かしそうでした。





「写真だけでなく、記憶もカラーにしている」
最近私がよく言うセリフなのですが、改めてその効果が実感できる体験でした。
これからも依頼してくださる方々の気持ちを大切に、カラーライズの作業にあたりたいと思っております。

凄技!に負けてない?

ちょっと前のNHK番組「凄技!」は、すっかりと色あせた写真を元の彩りに戻すというテーマでした。まさしく小林美術科学がやっている、日本美術デジタル復元以外の、もう一つの大きな事業「カラーライズ」です。
超絶 凄(すご)ワザ!「夢かなえますSP よみがえれ!思い出の写真編」




番組の基本的内容はいつもテーマがあって、そのテーマに挑戦する立場の違う二者がそれぞれのテクニックを駆使して問題をクリア、その時間やクオリティなどを競争するのですが、今回は競うことはしていませんでした。
なぜなら、比較のしようがないからです。




ひとつは、コンピュータの独自のプログラムによって、自動的にカラーにするというもの。
以前、白黒写真を自動でカラーにするという、非常にマユツバものの話題が、テレビをにぎわせていましたが、それとはちがう会社。


白黒写真には色の情報はありません。なので、それを自動でカラーにするのは基本的にムリです。(でも最近は、何千ものあらゆる種類のカラー写真をコンピュータに覚えこませ、形や明度のパターンから着色するAI人工知能技術があります)
でも、もともとがカラーならば、どんなに色あせても色素は残っています。それをどうにか読みとって再現することは可能です。


その技術は素晴らしいものでした。
おそらくアナライザーで色の絶対値を独自のノウハウで抽出していると思うのですが、再現されたものは、撮ったばかりの色具合で見事でした。
ただ、独自のプログラムとノウハウでということで、もちろん肝心な部分は企業秘密なので、うがった見方をすれば、白黒写真自動復元の場合と同じですが…(NHKはあの作曲家問題もありましたし(^^;;)




もう一つは、肖像画を専門に手がける画家。スーパーリアリズムのテクニックで、写った本人の別の写真、似ていると言われる息子の顔を写生し、それを元の写真を下絵がわりに各パーツを組み合わせていく制作方法です。
これはいわば芸術品であり、到底早くできるわけではなく、顔部分だけの復元になりました。




なるほど、私はその中間の技術で復元しているのだな、と感じることができました。
つまり、残っている色素を最大限活かして色を選定、それでもシルエットまではクッキリとなりませんから、他の写真からパーツを切り取って合成していくわけです。


なので、レタッチ技術とアートテクニックを混ぜ合わせて、それにさらに歴史的背景の調査とこれまでの知識からの推測が加わるのが、私のやり方でしょうか。
その結果かなり高価になってしまうのですが、最近はパソコンをいじれる人もカラーライズ出来ます、と言ってしまう時代に入ってきて、なかなか難しいものです。




プロがプロであることに誇りを持つことの困難が、デジタルの世界でもおきているのですから、伝統産業なんかは言わずもがな、です。

「奇跡体験!アンビリーバボー」放送されました

8月25日(木)19:57~20:54フジテレビ「奇跡体験! アンビリーバボー」で、当社が手掛けた白黒写真のカラーライズ写真が、たくさん放送されました。


内容は「国内実録!チンパンジーが末っ子になた家族」。
”今からおよそ50年前、チンパンジーと1つ屋根の下で暮らす一家がいた。(中略)当時彼らはある事情で突然チンパンジーを育てなければならなくなった。親の愛情を奪われた息子の葛藤。やがて芽生え始めた種を超えた愛…チンパンジーとの出会い、そして別れ…その中で悩み、傷つき、ぶつかり合った家族。
 これは、チンパンジーと過ごした家族の愛と絆の実話。真実のホームドラマである。”
(「奇跡体験!アンビリーバボー」のホームページより抜粋)


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今回も色々と得ることが多くありました。
その主なものは、
1・短い時間で多くの作品を量産できた
2・違和感のない自然な表現が実現できた
3・新しいカラーライズの展開を確認できた


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最初のお問い合わせをいただいたのが、実は16日。
いつものペースだと5点がいっぱいくらいの制作期間で(もちろん風景や大人数の写真は非常に時間がかかりますので、一概にいえませんが…)、色々な業務を平行にこなしながらも、6倍ちかいの29点を仕上げることができました。
昭和40年くらいの当時の様子を知っているので、風俗的な配色を調べる必要がなかったこと、つまり時間のかかる調査が必要がなかったことが大きいのですが、それにしても、効率にこだわって制作することで、6倍の生産量を実現できました。


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また、自然な表現が実現できたことも、今回、大きく自信を得るところとなりました。
「自然な表現」は当たり前なことなのですが、明治から昭和20年台までの写真は、画像が粗い場合が多く、”もともとカラー写真であったかのような自然さで”再現するのが、なかなか難しいのです。
心を砕いたのは、生え際。人間だと髪の毛の生え際、チンパンジーだと体全体の毛と地肌の具合です。ここには結構テクニックが生きています(企業秘密ですが)。
あと地味なところで大変だったのは、奥さんの眼鏡フレーム。べっ甲のように透明な中にも模様が入っています。


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もともとカラー写真であったかのように表現できたことで、カラーライズの新しい展開が確認できました。
それは、あえてカラーライズしました、という技術を見せないことです。
25日のオン・エアーを見て驚きました。白黒写真をカラーにしました、という説明がなかったのです。そういうカラー写真がもともとあり、そのまま使いました、という感じで番組が構成されておりました。
それでいいのです。カラーライズが当たり前に自然に使われる、これはカラーライズの成功だと言えるからです。
このような使い方は今後増えるでしょうし、技術の説明がないことが当たり前になる次の段階に入ったと実感しました。


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今回、あまりにも時間がなかったので、登場した写真資料のすべてが当社のカラーライズではなく80%くらいだったのですが、提出した作品29点のうち27点を使っていただきました。残りの2点のうち1点はテスト画像でしたので、ほぼ全点使っていただいたことになります。
繰り返し登場した家族団らんの象徴的なシーン(下の写真)、フィナーレの回想シーンは、すべて当社の作品でした。
「自然な表現」のクオリティーにご満足いただけたのではないか、と思っております。


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シンプルなのに時間がかかったのが、一番最後に追加されたこの作品。
チンパンジーの来ているパジャマの柄。ひとつひとつ色を塗っていくのが結局はいちばん確実なのでそうしました。自然さを大切に、妥協しないでよかったと思っています。
映されたのは一瞬でした。そういう意味でも、技術を説明しない使われ方をしているわけですね……。


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それにしても、チンパンジーって、破顔一笑って感じで笑うんですね。
やはり相当人間に近いことが分かります。ずっといっしょにいたら、愛情を抱いてしまいます、きっと。


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「奇跡体験!アンビリーバボー」に写真のカラー化協力しました

明日放送予定の「奇跡体験!アンビリーバボー」に古写真のカラー化で協力しました。

2014年に51歳で亡くなった神戸市立王子動物園のチンパンジー「チェリー」と、チェリーより先に他界した名物飼育員の亀井さんとの人工飼育の日々、亀井さんの家族の辛苦や感動を紹介します。

この番組の中で亀井さんが飼育していた当時の写真、家庭で家族同様に愛情豊かに育てる姿などをカラー化しています。

急なお知らせになってしまいましたが、ぜひご覧ください。

■放映日

8月25日(木)19:57〜20:54

■放映局

フジテレビ系列

■番組サイト

http://www.fujitv.co.jp/unb/index.html

フジテレビ系奇跡体験!アンビリーバボータイトルロゴ

※番組ロゴ画像は番組制作会社のイーストエンタテイメントさんサイトよりお借りしました。

(広報:小犬丸)

心をカラーにするということ

カラーライズ(白黒写真のカラー化)が新しい局面を迎えています。
これまでも自動でカラー化する企業が話題になり、マスコミにも取り上げられました。その企業は、「独自に開発したプログラムにより、白黒を自動でカラー化」というもの。
正直、私を含め他の専門家も、そのお話には疑問を抱いておりました。「白黒には微妙に色の要素が残っていて……」というような発言があったのですが、私は「そんなことはない、白黒には色の要素はない」という見解だったからです。

しかし、ついにカラーライズの自動化に納得のいく理屈で、その自動変換のプログラムが公開されました。
早稲田大学の研究成果として、しかも無料です。これは脅威です。
http://colorize.dev.kaisou.misosi.ru/
で、気軽に白黒写真がカラー化できます。こちらはそのプログラムを手軽に使えるように、白黒写真を選択すればカラーをアウトプットしてくれるというものです。
公開されたからには、商売敵とはいえ、こんな便利なものもありますと紹介しないといけません。悔しいですが。

人工知能が、たくさんの白黒写真と想定されるカラーの画像を覚え、無数の形と色のパターンから、色を自動的に選択しているのだそうで、「なるほど、その手があったか」というほどの明快さです。

そんなプログラムが公開される前(少なくとも私が知る前)、受注したものがあります。
ある一家の家族写真です。個人の方からご依頼をいただきました。
何という大家族でしょう。21人もいます。
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中央にお年寄りの女性がふたりいて、その周りを囲むように幼児をふくめた若い世代がかこんでいます。
戦後間もない雰囲気があります。
左上の男性など帽子を斜めにきどってかぶり、闇市を取り仕切るあんちゃん的な恰好です。

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まず苦労をしたのは、ノイズの除去です。
紙の切れた部分をつなぎ合わせた跡を消すのは、比較的たやすいのですが、ご覧のようなデジタル的なノイズが写真の下全体に広がっており、その除去に大変苦労しました。
もちろん、一つ一つ丁寧に消していきます。

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やっと、白黒の全体が整いました。
このときは非常に色々な業務が立て込んでいて、ここに至るまで2か月が経ってしまいました。
いよいよ着色です。
背景は比較的簡単です。素材も見た目でわかりますので、ここまでは順調に進みます。

何といっても、腕の見せ所は肌色です。
肌のグラデーション、そして、ほんのちょっとだけ、分からないくらいの淡いピンクをふわっとさします。
これは、今の集合写真でもよほど解像度の高いもの以外は見えませんから、写真的というよりかは、絵画的かもしれません。
でも、こうすると、本当に写真に血が通うのです。人としてのストーリーを語り始めるのです。
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さて、こういう時代にも、おしゃれに気を使う人、そうでない人の差がでるのが、面白いですね。
いや、明らかに金銭的に豊かな人、おしゃれはしたいけど子育てで手一杯の人、はなから関心のない人など、人の気持ちが恰好に出ているか、興味は尽きません。
そんなそれぞれの人の気持ちも想像しながら、着色を進めます。
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左の少女のところで、手が止まりました。
この子は、今でも通用する美人だな、と思って止まったのではなく、おそらく祖母であろう女性の肩に、そっと手をのせているのを発見したからです。
こういうちょっとした心のかよっていた証拠を見ると、感動します。
そして、カラーにすることで、その温かい気持ちをより確固たるものにする作業が、私は大好きなのです。

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やっと出来上がりました。
それぞれが何色を着ていたかは、大体の時代考証はしながらも、全体的なバランスも考えて配色することも心がけました。
どうせなら、見た目も華やかで、きれいな方がいいではないですか。
そういう意味でも、さらに絵画的要素もあるのかもしれません。

世の中が進んで、白黒写真も自動でできるのが現実的になったとき、とにかく複雑なノイズを丁寧にとるとか、登場人物の心までも想像しながら色をさすことでしか、私は勝負できなくなっているのかもしれません。
でも、特に大切にしたいかけがえのない写真の場合には、あえてお金を出してでも「心のある絵画のような写真」を作ってほしい、というニーズがあると信じ、これからも頑張って依頼者の気持ちにお応えしたいと思っております。

最後に、あの自動でカラーにするプログラムが、この写真をカラー化したのが以下の写真。
ああ、ちょっと安心しました。まだ、写真に写った人の心まで、色彩にはできてないようです。
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昭和50年、新木場空撮写真を復元

これは正式には、白黒のカラー化の例とは言えないでしょう。
と言うのも、依頼されたのは陽に焼けて色が退色した写真だからです。つまりは、もともとはカラー写真だったのです。

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ご覧のように、見事に色あせています。
昭和50年くらいの新木場の空撮写真なのですが、新木場にあります瀧口木材株式会社の社長室に長年飾られていたといいます。角度が違うB3くらいの紙焼きが二点。
社長室の改装を前に、飾られていたこの写真を復元してほしいと相談をいただいたのでした。

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額を外すと、その陰で色の残った部分が出てきました。これは、全体のトーンを考えるときに参考になります。
思い入れのある写真ですから、トーンももとに戻したいものです。思い出もよみがえるように。
次に、ガラスを外すと、付着してた部分がべりっとはがれ……。しかも目の引く煙突が!
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この部分は一見何にも見えませんが、復元していくと、面白いものが見えてきました。答えは後ほど。
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まずは、とにかく画面を丁寧にキレイにしていきます。
カビもたくさんありますし、ホコリもびっちり!それに剥落……。それが二点、素材を整えるだけで、一ヶ月以上の時間がかかりました。

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次にカラー化に向けて、極端な赤みを取りつつ、絵としてはっきり見えるところまで、コントラストを立てていきます。
このさじ加減が、腕の見せどころ。やり過ぎてはいけません。

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いよいよ色をつけていきます。色をつけるのも、大変!マスクをひとつひとつ描き起こすからです。
もちろんここまでするのは、そのクオリティーを求められているから。自動でチョイスするツールもありますが、細かいところが粗くなるので今回は手作業にしました。きっと、完成した作品はよく覗き込まれるでしょうからね。

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海と木材から着色して全体の雰囲気をつかみます。
それだけで、ぐっとリアルになってきました。
そして緑。更地に雑草が生えて見える緑は、まだらでなんとなく白っちゃけてます。このニュアンスが難しい。

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屋根や煙突のなどの細かいところを彩色して、完成しました。
三ヶ月かかった力作です。

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見栄えのいい豪華な額装をして納品。
どうです、かっこいいではありませんか(自画自賛)。
お客様も相当の喜んでくださり、その証拠に、「組合の人々に渡したいから、40部ずつ焼きまししてほしい」と依頼して下さいました。
私は丹精を込めたのでこの作品の思い入れがあますが、先方の在りし日の新木場が復活したことの喜びの方が大きいのに、反対に感動をいただきました。

今は、地元の銀行に貸し出しているそうです。
何か、嫁いだ先でその家だけでなく、地元の人々にも愛されている娘を送り出した親のような心境です。

自動化によって、どんどん手軽になる白黒のカラー化ですが、スーパーレアリズムの絵画に存在価値があるように、カラー化にも芸術性が存在すると信じ、これからも手間でも丁寧な作業にこだわりたいと思っています。

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さて、あの部分から何が現れたか……。
雪で白く浮かび上がる日本アルプスでした。

昭和41年、茅ヶ崎海岸(白黒カラー化例3)

「昭和41年の茅ヶ崎海岸」youtubeへリンク
依頼を受けて、フィルムのカラーライズ(彩色化)をしました。
もともとは白黒フィルムではなく実はカラーフィルムなのですが、経年変化が激しく、まるで白黒フィルムのようになっていました。
茅ヶ崎昭和41年before
舞台は、昭和41年(1966)の茅ヶ崎海岸です。
私はこの年の5月、東京に生まれます。なので見ているだけで、ちょっと胸が熱くなります。
でも劣化の激しい状態では、正月の風景といっても、それほどそれらしさが感じられませんでした。肝心の空にはあまりにも多くのホコリが付着していたからかもしれません。
茅ヶ崎昭和41年beforeごみなし
そこで1コマ1コマ、丁寧にゴミをとっていきます。
すると、上空には凧か上がっていることがはっきりと見えてきました。すべてのホコリを取り除いて見てみると、凧が上げる人が糸を引っ張るとあわせて、上下に動いているのが見てとれました。
手前の着物の人々……。当時は、正月に着物着る人がまだまだたくさんいたんですね。
茅ヶ崎昭和41年afterごみなし
そして色がはっきりすると、冬らしいすがすがしくも凛とした空気と、高い澄んだ空がよみがえりました。
5秒という非常に短い時間ですが、いろんな情報が含まれているものです。
だから、やはり彩色化は価値があるのだと、確信しています。

納品したお客様は大変喜んで下さり、茅ヶ崎の人々やご家族にお見せして、今は変わりつつある海岸の在りし日の姿を伝えるために使いたいとおしゃっていました。
そのような活動の助けになると、本当にやったかいがあったというものです。

花魁の体温(白黒カラー化例2)

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白黒のカラー化でよみがえる息吹


私の白黒写真のカラー化事業の中で、言わば「アイコン化」している作品が、この花魁(おいらん)です。
これは大正の吉原にいたと花魁とされています。

正直申しまして、白黒写真を見たときは何とも思いませんでした。もちろん風俗的な研究材料としては興味深かったのですが、写された女性にはそれほど魅了されませんでした。
花魁と言えば吉原のスターですから、もっと何か今のスターに感じるような「ときめき」は感じたいところですが、何にもありません。(すみません、ここだけは男性目線で語らせていただいております)

白黒をカラーにする以上の意味


ところが、色をさしたところ、花魁の体にあたたかい血が流れ出した途端、何かが変わりました。そしてこちらも何かを感じたのです!
紅さした唇から語られる言葉の数々を想像したり、重そうな簪(かんざし)をさしている姿を想像したりすると、ただ白黒のベールに覆われたままだった歴史的資料に載った女性像が、精一杯生きているひとりの女性として感じられるようになったのには驚きました。

白黒というものは、時には画面に抒情性を与えますが、リアルさからは引き離す効果もあるようです。
別の想像を促す、あるいは想像を停止させるような白黒のベールを引き剥がしてカラーにすると、本当の時代の空気を感じることができる……。
この女性は、カラーライズ(カラー化)の意義を気づかせてくれた、大切な方なのです。

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本当に最後の親孝行

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父が死んで4年になります。色々とありましたが、遺影を私が作って満足のいくその仕上がりに、最後の最後に親孝行ができた、と今でも思っています。この心の充足感は、何物にも代えがたいものです。
どうしても嫌だったのです。よく式場で見るのです。無理やり切り抜いたり、下手な合成で黒い着物を着せられたり、間に合わずにピンボケの写真が引き伸ばされたりした遺影たちを……。

あらかじめ用意することなどありませんでしたので、家族の手元にも、まともな写真がありませんでした。そこで、元気だったころので、いちばん最近の写真を洗い出し、正面を向いているけども小さい写真と、スナップ写真だけども顔のパーツがはっきりしている写真を合成し、更に背景を爽やかな緑にして仕上げました。

遺影で記憶が固定化されることもあります。妥協してはいけません。

(合成、レタッチによる遺影制作を承ります。メニュー「レタッチ」→「理想の遺影」の下にございます、コメントからお問い合わせください)