凄技!に負けてない?

凄技!に負けてない?

ちょっと前のNHK番組「凄技!」は、すっかりと色あせた写真を元の彩りに戻すというテーマでした。まさしく小林美術科学がやっている、日本美術デジタル復元以外の、もう一つの大きな事業「カラーライズ」です。
超絶 凄(すご)ワザ!「夢かなえますSP よみがえれ!思い出の写真編」




番組の基本的内容はいつもテーマがあって、そのテーマに挑戦する立場の違う二者がそれぞれのテクニックを駆使して問題をクリア、その時間やクオリティなどを競争するのですが、今回は競うことはしていませんでした。
なぜなら、比較のしようがないからです。




ひとつは、コンピュータの独自のプログラムによって、自動的にカラーにするというもの。
以前、白黒写真を自動でカラーにするという、非常にマユツバものの話題が、テレビをにぎわせていましたが、それとはちがう会社。


白黒写真には色の情報はありません。なので、それを自動でカラーにするのは基本的にムリです。(でも最近は、何千ものあらゆる種類のカラー写真をコンピュータに覚えこませ、形や明度のパターンから着色するAI人工知能技術があります)
でも、もともとがカラーならば、どんなに色あせても色素は残っています。それをどうにか読みとって再現することは可能です。


その技術は素晴らしいものでした。
おそらくアナライザーで色の絶対値を独自のノウハウで抽出していると思うのですが、再現されたものは、撮ったばかりの色具合で見事でした。
ただ、独自のプログラムとノウハウでということで、もちろん肝心な部分は企業秘密なので、うがった見方をすれば、白黒写真自動復元の場合と同じですが…(NHKはあの作曲家問題もありましたし(^^;;)




もう一つは、肖像画を専門に手がける画家。スーパーリアリズムのテクニックで、写った本人の別の写真、似ていると言われる息子の顔を写生し、それを元の写真を下絵がわりに各パーツを組み合わせていく制作方法です。
これはいわば芸術品であり、到底早くできるわけではなく、顔部分だけの復元になりました。




なるほど、私はその中間の技術で復元しているのだな、と感じることができました。
つまり、残っている色素を最大限活かして色を選定、それでもシルエットまではクッキリとなりませんから、他の写真からパーツを切り取って合成していくわけです。


なので、レタッチ技術とアートテクニックを混ぜ合わせて、それにさらに歴史的背景の調査とこれまでの知識からの推測が加わるのが、私のやり方でしょうか。
その結果かなり高価になってしまうのですが、最近はパソコンをいじれる人もカラーライズ出来ます、と言ってしまう時代に入ってきて、なかなか難しいものです。




プロがプロであることに誇りを持つことの困難が、デジタルの世界でもおきているのですから、伝統産業なんかは言わずもがな、です。